今後の確実な礎になる BYDアット3へ試乗 航続距離420km 良い意味で印象は普通

公開 : 2023.03.21 08:25  更新 : 2023.05.01 07:57

日本での販売もスタートした、中国新興ブランドによるBEV。VW ID.4のライバルを、英国編集部が評価しました。

英国のディーラーは2025年までに100か所へ

中国の新興ブランド、大胆なBYDが英国市場へ参入した。だが、アット3は少し控えめ。同社が掲げる野心は非常に大きなものだが、実際のクルマは堅実的。ごく自然に走る、バッテリーEV(BEV)のファミリー・クロスオーバーだといえる。

BYDは1995年に創業した中国の技術メーカーで、バッテリーの製造で急拡大した。世界中で使われているスマートフォンやノートパソコンを動かすバッテリーは、BYD製であることが少なくない。コロナ渦で活躍したマスクも生産している。

BYDアット3 デザイン(英国仕様)
BYDアット3 デザイン(英国仕様)

得意とするバッテリー技術を応用し、自動車産業へ進出したのは20年前。2022年には190万台のクルマを製造するに至った。これにはBEVだけでなく、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)も含まれる。驚くほどの勢いで成長し、確実に成功を掴んでいる。

中国市場に留まらず、世界市場への進出にも意欲的。気が付けば英国にも上陸し、2023年末に30店舗のディーラーを展開する予定を立てている。2025年までに、100か所へ増やすことが目標だという。

英国や日本では既にBYDの電動バスが走っているが、われわれに身近な量産車として先鋒を担うのが、今回試乗したアット3だ。中国市場では多様なモデルを販売する同社にあって、これは主力車種の1つに数えられる。日本での発売もスタートしている。

VW ID.4よりひと回り小さいサイズ 航続420km

クルマの基礎骨格をなすのは、BYDが独自に開発したBEV専用のアーキテクチャ、e-プラットフォーム3.0。駆動用バッテリーがフロア部分に敷き詰められた、いわゆるスケートボード構造を持つ。

英国に導入されるトリムグレードは3段階だが、パワートレインの仕様は1種類のみ。203psの駆動用モーターが1基載り、航続距離は420km、電費効率は6.4km/kWhがうたわれる。

BYDアット3 デザイン(英国仕様)
BYDアット3 デザイン(英国仕様)

駆動用バッテリーは実容量で60.5kWhとなる、自社製のリン酸鉄リチウムイオンで、薄型のセルで構成されエネルギー密度が高い。技術企業として多元的に展開するだけあって、モーターや半導体なども自社でまかなえる強みを持つ。

今回の試乗では、5.1km/kWhという電費が示された。肌寒い天気で。充電能力はACで7kW。ミドルグレード以上では11kWへ上昇する。DC急速充電器には、最大88kWまで対応する。

ボディの見た目は従来的。サイズは全長が4455mm、全幅が1875mm、全高は1615mmで、フォルクスワーゲンID.4よりひと回り小さい。スタイリングは曲線的で、目立った個性は感じられないものの、景色には溶け込めると思う。

標準装備は充実している。ベースグレードのアクティブでも、シートヒーターにパノラミックサンルーフ、外部給電機能などが備わる。エネルギー効率を高めるため、エアコンにはヒートポンプ式が採用されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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