日本の「軽」は欧州でも通用する? 価格や性能で強み ただし大きな問題も…
公開 : 2023.03.14 19:25
軽自動車が直面する生々しい課題
トルクGTを例に挙げると、同社は少量の輸入販売を専門としており、個人輸入代行サービスの依頼を受けることも多いが、サクラを英国で乗るとすれば「2万ポンド弱(約320万円)」で購入できるという。この価格では、2万6995ポンド(約440万円)で350kmの航続距離を持つMG 4のようなモデルに注目するのも無理はないだろう。
仮に、どこかのメーカーが欧州で軽自動車を出すとしたら、大きな問題に直面することになる。まず、軽自動車規格で作られた箱型のボディ形状は、曲線的なクロスオーバーを好む欧州の消費者には不向きである。また、GSR2という厳しい安全規制をクリアしなければならない。
2022年7月6日以降に欧州で発売される新型車はすべてGSR2に適合しなければならず、2024年からは既存の新車も、必要であれば改造してでも適合しなければならない。
GSR2では、高度な緊急ブレーキ、居眠り運転の検知、緊急時の車線維持などの安全システムの搭載が求められているが、一部の車種では改造が難しく、ネックになっている。そのような安全システムを持たない日本市場特有のモデルをわざわざ改造することは、経済的とは言いにくい。しかし、最近の軽自動車は先進的な運転支援機能を備えており(例えばサクラは日産の「プロパイロット)を搭載)、欧州向けに大幅な改造は必要ないかもしれない。
軽自動車は、欧州市場で失敗してきた歴史も克服しなければならない。欧州で成功したのはスズキだけで、ワゴンRのワイド版であるワゴンR+(軽自動車規格外のサイズとエンジンを搭載)の年間販売台数はピークとされる2001年で11万9008台(兄弟車のオペル/ヴォグゾール・アギーラを含む合計)だった。他の軽自動車よりは多いが、それでもルノー・クリオ(同年、49万2308台)やフォード・フィエスタ(25万5123台)といったBセグメント車には遠く及ばない。
現代の市場原理に照らして、この傾向を逆転させることができるかどうかは、日本のメーカーが実際に乗り込んでみるまでわからない。