V10協奏曲 ランボルギーニ・ガヤルド ポルシェ・カレラGT ダッジ・バイパー それぞれの魅力 前編

公開 : 2023.04.01 07:05

新しいアルミボディのスリムなミドシップ

ボブが抱いたイメージは、1990年代のコブラ。軽いオールアルミ製エンジンに加えて、ルーフだけでなくドアハンドルも省略し、車重は1522kgに抑えられていた。実用性は追求されていなかった。

巨大なパワーは、リミテッドスリップ・デフを介して後輪を駆動。幅が13.0Jという極太のホイールには、幅335のタイヤが巻かれた。サスペンションは、前後ともにダブルウイッシュボーン式で、欧州車に迫る洗練された足まわりを得ていた。

ランボルギーニ・ガヤルド(2003〜2013年/英国仕様)
ランボルギーニガヤルド(2003〜2013年/英国仕様)

今回の3台では最も小柄なのが、イタリア生まれのガヤルド。スタイリングはシャープだが、シルバーということもあって主張はさほど強くない。ターゲット層はコルベットTVRではなく、フェラーリポルシェを嗜好するドライバーに設定されている。

クライスラー傘下にあったランボルギーニは、1988年のV10エンジンを搭載したP140と、ジョルジェット・ジウジアーロ氏によるデザインの1995年のカラ・コンセプトで、ジャルパの次世代を模索していた。しかし、開発に必要な資金を準備できなかった。

しかし、1999年にフォルクスワーゲン・グループのアウディに買収されたことで、状況は好転。デザイナーのルク・ドンカーヴォルケ氏の手による、まったく新しいアルミニウム製ボディのミドシップ・スーパーカーが誕生した。

パワーユニットに選ばれたのは、サンタアガタが誇る技術の成果といえた、4961ccのオールアルミ製V10エンジン。シャシー中央へ縦方向にマウントされ、ドライサンプ化することで低重心化を叶えていた。

カーボン製タブシャシーの中央にV10

同クラスのフェラーリを凌駕するべく、最高出力は500ps、最大トルクは51.8kg-mを発揮。同時期のV8エンジンを搭載した360モデナは、405psと37.9kg-mだった。

トランスミッションは6速マニュアルの他に、パドル操作が可能なセミオートマチックのeギアも設定。四輪駆動システムを搭載し、車重は1520kgとやや重めに仕上がっていたが、確実なトラクションを確保していた。

ポルシェ・カレラGT(2004〜2006年/英国仕様)
ポルシェ・カレラGT(2004〜2006年/英国仕様)

他方のポルシェは、ガヤルドと同時期に過去最高のスーパーカーを生み出したいという野望を実現させた。レギュレーションの変更に伴い、2000年に準備していたル・マン・マシンは活躍の場を失っていた。それにはV10エンジンが載っていた。

そこでが導かれたのが、モータースポーツの技術を展開したミドシップのカレラGTだ。低く好戦的なフォルムで、グラスエリアが小さくリアデッキは長大。ル・マン・マシンのようにも見えなくはなく、現在でも他のクルマとは一線を画す。

スペック表を確認しなくても、最高速度は300km/hを軽く超えると想像できる。それでいて、エンブレムを確認せずともポルシェだと理解できる。現在のボクスターとの血縁関係も感じ取れる。

専用のカーボンファイバー製タブシャシーの中央に縦置きされたのは、5733ccのオールアルミ製V10エンジン。軽量なカーボン製クラッチと6速マニュアルを介して、後輪を駆動した。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    トニー・ベイカー

    Tony Baker

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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