V10協奏曲 ランボルギーニ・ガヤルド ポルシェ・カレラGT ダッジ・バイパー それぞれの魅力 後編

公開 : 2023.04.01 07:06

間もなく終焉を迎える大排気量・他気筒エンジンの時代。シンフォニックなV10を積んだ3台を、英国編集部が振り返ります。

ガヤルドバイパーより遥かに熱狂的

レーシングカーの様相といえるエンジンルームとは裏腹に、カレラGTのドアを開くと上質なポルシェの空間が広がる。身体をしっかり支えるシートは柔らかなレザーで覆われ、トリムにはカーボンが惜しみなく用いられている。

運転席と助手席の間を、スリムなセンターコンソールが仕切る。高い位置にシフトレバーがレイアウトされ、丸いノブは往年のル・マン・マシン、917を想起させるウッド。ステアリングホイールは、想像より大きい。

ポルシェ・カレラGT(2004〜2006年/英国仕様)
ポルシェ・カレラGT(2004〜2006年/英国仕様)

メーターパネルには、5つのリングが重なる。ポルシェの伝統を守るように。ちなみに、カレラGTはすべて左ハンドル車だった。

5.7L V型10気筒エンジンを目覚めさせる。クラッチペダルは重く急に繋がるため、アクセルペダルはボディが進み始めてから優しく倒すのがいい。トルクが極めて太く、苦労なしに発進できる。

プッシュロッドのサスペンションは、明らかに硬い。路面の凹凸へ逐一反応する。

開けた道で速度域が高まると、カレラGTはドライバーとの距離を縮める。エンジンサウンドは、ガヤルドやバイパーより遥かに熱狂的。5000rpmを超えると音質がハードになり、前方へ吸い込まれるようなパワーが爆発的に生み出される。

シフトレバーは軽く素早く動かせる。ゲートの間隔はタイトだが、正確に次のスロットへ倒せる。発進時はやる気が感じられなかったカーボンセラミック・ブレーキも、質感と制動力が見違える。

今でも極めてモダンなスタイリング

ステアリングも素晴らしい。フェラーリほどクイックではないものの、リニアでスムーズ。好ましいフィーリングやフィードバックが手のひらへ伝わる。

グリップは甚大。姿勢制御にスキはない。カレラGTの本領を探るには、公道では許されない速度域へ踏み入れる必要がある。

ランボルギーニ・ガヤルド(2003〜2013年/英国仕様)
ランボルギーニ・ガヤルド(2003〜2013年/英国仕様)

この体験の後では、ランボルギーニ・ガヤルドが手懐けやすく感じられる。そもそもアウディ傘下になったことで、乗りやすさが大きく向上している。

現オーナーはアンドリュー・フィリップス氏。購入したばかりだが、グレートブリテン島から南フランスまで、往復3000km以上の旅行を既に楽しんだそうだ。

登場は20年も前だが、スタイリングは今でも極めてモダン。シャープなエッジで包まれた滑らかな面構成は、カウンタックのイメージとも重なる。

ドアを開くと、落ち着いたブラックのインテリアが出迎える。スーパーカーらしいドラマチックさは薄い。底辺がフラットになったステアリングホイールが、特別なモデルであることを静かに主張する。

低いフォルムから想像する以上に、人間工学は理想的。ポルシェと遜色ない。確かに、購入直後に長旅を計画したとしても不思議ではない。

発進させれば、V10エンジンが3000rpm辺りから有り余るパワーを放ち出す。6500rpmを過ぎると、エッジの効いた咆哮が勢いを増す。カレラGTの究極的な音響体験には届かないにしても、アルプス山脈にサウンドがこだまする様子が思い浮かぶ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    トニー・ベイカー

    Tony Baker

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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