V10協奏曲 ランボルギーニ・ガヤルド ポルシェ・カレラGT ダッジ・バイパー それぞれの魅力 後編

公開 : 2023.04.01 07:06

素晴らしくまとまりのいいマッスルカー

アンドリューのガヤルドにはeギアが組まれ、低速域での変速時にはアクセルペダルの加減が求められる。慣れが必要といえるが、ひとたびスピードが乗ってしまえばシームレスに動く。

ステアリングホイールに伝わる感触は薄いものの、反応は正確。レシオも、スーパーカーとしてはスロー側にある。グリップ力に不足はなく、カーブを攻め込んでいくと穏やかにアンダーステアへ転じていく。驚くほど乗りやすい。

ランボルギーニ・ガヤルド(2003〜2013年/英国仕様)
ランボルギーニ・ガヤルド(2003〜2013年/英国仕様)

四輪駆動システムを活用すれば、緊張することなく、エモーショナルに目的地まで目指せそうだ。ランボルギーニで。

かたやレッドのダッジバイパー RT-10はロードスターなこともあり、アメリカンなフリーダムに満ちている。試乗後の筆者のメモには、リスペクト、と走り書きされていた。英国のHPCクラシックス社が販売中の1台だ。

丁寧に運転すると、素晴らしくまとまりのいいマッスルカーという実像が見えてくる。ドアを開くため車内側のドアハンドルを引き、シートへ座ってみても、その実感は得られないかもしれないが。

バイパーはシンプル。ダッシュボードにはタコとスピードの他に、4枚のメーターが並ぶ。ヒーターの操作パネルとライトのスイッチ、シガーソケットも備わるが、車内にはその程度しかない。

3スポークのステアリングホイールには、エアバッグも備わらない。視覚的な印象を高める装飾トリムはなく、硬質なプラスティック製部品は隠されていない。大柄なシートは座り心地が良いが、製造品質が高いとは呼べない。

どれも魅力的なV10エンジン・マシン

重たいクラッチペダルを緩めると、怒涛のトルクでスルスルと速度が高まる。6速マニュアルのシフトレバーは驚くほど軽く、正確に次のギアを選べる。8.0Lという大排気量を考えると、ギアは4速でも足りただろう。

ステアリングホイールは重め。手のひらへしっかり情報が伝わってくる。電子的なアシストの介入なしに、正直に直接的に運転している感覚が湧いてくる。1522kgに405psだから、刺激もダイレクトだ。0-97km/h加速は4.6秒でこなす。

手前からレッドのダッジ・バイパー RT-10と、シルバーのランボルギーニ・ガヤルド
手前からレッドのダッジ・バイパー RT-10と、シルバーのランボルギーニ・ガヤルド

舗装の荒れた区間で激しい加速を試みると、バイパーが牙をむこうとする瞬間を垣間見れる。鋭く速度を高めていくには、まっすぐクルマを進めることへ集中する必要がある。何と強烈な個性なのだろう。

現在の取引価格を比べると、カレラGTは100万ポンド(約1億6100万円)をゆうに超える。残りの2台は、6万ポンド(約966万円)前後あればオーナーになれる。

その価格も踏まえて、3台で最も訴求力の勝るV10エンジン・モデルを選ぶなら、ガヤルドといえるかもしれない。季節を問わず乗れる、本物のイタリアン・スーパーカーだ。

もっとも、バイパーはガヤルドやカレラGTより10年以上も先に登場した。新車時の価格も大きく異る。直接的な比較は難しいとしても、V型10気筒ユニットはどれも魅力的だとは明言できるだろう。

協力:サイモン・ドラブル氏、マイルズ・ハーディ氏、HPCクラシックス社

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    トニー・ベイカー

    Tony Baker

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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