V10協奏曲 ランボルギーニ・ガヤルド ポルシェ・カレラGT ダッジ・バイパー それぞれの魅力 後編
公開 : 2023.04.01 07:06
素晴らしくまとまりのいいマッスルカー
アンドリューのガヤルドにはeギアが組まれ、低速域での変速時にはアクセルペダルの加減が求められる。慣れが必要といえるが、ひとたびスピードが乗ってしまえばシームレスに動く。
ステアリングホイールに伝わる感触は薄いものの、反応は正確。レシオも、スーパーカーとしてはスロー側にある。グリップ力に不足はなく、カーブを攻め込んでいくと穏やかにアンダーステアへ転じていく。驚くほど乗りやすい。
四輪駆動システムを活用すれば、緊張することなく、エモーショナルに目的地まで目指せそうだ。ランボルギーニで。
かたやレッドのダッジ・バイパー RT-10はロードスターなこともあり、アメリカンなフリーダムに満ちている。試乗後の筆者のメモには、リスペクト、と走り書きされていた。英国のHPCクラシックス社が販売中の1台だ。
丁寧に運転すると、素晴らしくまとまりのいいマッスルカーという実像が見えてくる。ドアを開くため車内側のドアハンドルを引き、シートへ座ってみても、その実感は得られないかもしれないが。
バイパーはシンプル。ダッシュボードにはタコとスピードの他に、4枚のメーターが並ぶ。ヒーターの操作パネルとライトのスイッチ、シガーソケットも備わるが、車内にはその程度しかない。
3スポークのステアリングホイールには、エアバッグも備わらない。視覚的な印象を高める装飾トリムはなく、硬質なプラスティック製部品は隠されていない。大柄なシートは座り心地が良いが、製造品質が高いとは呼べない。
どれも魅力的なV10エンジン・マシン
重たいクラッチペダルを緩めると、怒涛のトルクでスルスルと速度が高まる。6速マニュアルのシフトレバーは驚くほど軽く、正確に次のギアを選べる。8.0Lという大排気量を考えると、ギアは4速でも足りただろう。
ステアリングホイールは重め。手のひらへしっかり情報が伝わってくる。電子的なアシストの介入なしに、正直に直接的に運転している感覚が湧いてくる。1522kgに405psだから、刺激もダイレクトだ。0-97km/h加速は4.6秒でこなす。
舗装の荒れた区間で激しい加速を試みると、バイパーが牙をむこうとする瞬間を垣間見れる。鋭く速度を高めていくには、まっすぐクルマを進めることへ集中する必要がある。何と強烈な個性なのだろう。
現在の取引価格を比べると、カレラGTは100万ポンド(約1億6100万円)をゆうに超える。残りの2台は、6万ポンド(約966万円)前後あればオーナーになれる。
その価格も踏まえて、3台で最も訴求力の勝るV10エンジン・モデルを選ぶなら、ガヤルドといえるかもしれない。季節を問わず乗れる、本物のイタリアン・スーパーカーだ。
もっとも、バイパーはガヤルドやカレラGTより10年以上も先に登場した。新車時の価格も大きく異る。直接的な比較は難しいとしても、V型10気筒ユニットはどれも魅力的だとは明言できるだろう。
協力:サイモン・ドラブル氏、マイルズ・ハーディ氏、HPCクラシックス社