新型「GLC」、ディーゼルの走りを検証 メルセデス・ベンツの人気SUV、どう変わった?

公開 : 2023.03.16 12:04  更新 : 2023.03.24 17:05

乗り心地・ドライブモードを検証

乗り心地はドライブモードを快適性重視の「コンフォート」から操安性重視の「スポーツ」に切り替えても体感上下動(G)に著しい変化はない。

穏やかに走らせていれば「スポーツ」を選択しても穏やか。若干バネ下重量を意識させる車軸周りの揺動が感じられたが、粘りと据わりの利いた乗り心地が“信頼感と快適”を上手に融合させている。

GLC 220 d 4マティックの前席(内装色:パワーレッド/ブラック本革)
GLC 220 d 4マティックの前席(内装色:パワーレッド/ブラック本革)    宮澤佳久

操安性については低速で小回り性、高速で操安性を向上させる後輪操舵機構の制御特性も含めて、「コンフォート」ではロールを使った横Gの往なし、「スポーツ」ではロール粘りで旋回力を早く立ち上げる。

前者は穏やかな運転と相性がよくコーナリングなどの搭乗者の負担が少なく、後者は追従性よく揺れ返しを抑えた特性。ホストモードとドライバーモードと言い換えてもいいくらいだ。

なおFRプラットフォームは、前後方向のスペース効率がFFプラットフォームより劣る。

GLCも例外ではなく、従来型対比でも有効室内長に大きな変化はない。車体全長は4.7m強、ホイールベースは2.9m近いが、前席をアップライトなドラポジでセットしても後席のレッグスペースはFFプラットフォームのミドルSUVに劣る。

後席・荷室 どんな感じ?

もっとも後席の設えも、厚みと腰のあるクッションや身を委ねるような着座姿勢を取りやすいサイズであり、居住スペース以上の居心地を実現していた。

荷室の奥行きと幅は、ミドルSUVの標準レベル。つまり、平面寸法は一般的なレジャー用途には十分である。

新型GLCの荷室は、フロアボード下にご覧のスペースがある。
新型GLCの荷室は、フロアボード下にご覧のスペースがある。    宮澤佳久

床面から後席バックレスト上端までの丈、要は荷室高が浅いのが気になったが、これは床面ボードの位置をリアゲート開口との“掃き出し段差なし”としたため。

結果、床面下収納は目視で床面上寸法の2/3くらいの深さがあり、大容量のサブトランクスペースとして活用できる。

インパネ周りのデザインや機能は最近のメルセデス車に共通したもので、メルセデス車ユーザーなら即馴染める。操作動線も上手に整理され、ケレン味ない使い勝手・造形に好感が持てた。

以前は市場動向に神経質な対応をしていた時期もあったが、ここのところのメルセデス車はぶれがない。我が道を行く、というところだが、基本がウェルバランス、あるいはカテゴリーの基本コンセプトに忠実である。

新型となったGLCもそのとおりのモデルだった。これ見よがしの演出や性能のアピールがない。

デイリーユースも、自然の中も

「220 d」というパワートレインのキャラもあるのだが、SUVの使い方の一般論に最適化されたクルマの印象が強い。

取りこぼしのない全方位型なので悪くすれば没個性とも取れるが、「個性的」はアンバランスの言い換えでもある。そういった、あざとい訴求を必要としないのもメルセデス車であり、GLCなのだ。

GLC 220 d 4マティック(ハイテックシルバー)
GLC 220 d 4マティック(ハイテックシルバー)    宮澤佳久

とはいえ1000万円以上の投資である。何かを強く訴えて欲しいと思うのも人情。

全方位型よりも特化型のほうが投資効果を計りやすい。

GLCはアウトドア趣味のレジャーも含めた“生活の場に寄り添ったSUV”であり、無死角とも言うべき高水準のウェルバランスがもたらす安心が最大の魅力。無難な選択だが、多くのユーザーに最良の選択でもある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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