ゴードン・マレーT50 生産開始 「超軽量」3994cc V12スーパーカー、100台限定

公開 : 2023.03.16 06:05

ジェット戦闘機のようなコックピット

インテリアもT50における重要なテーマとなっている。フロアがフラットになったことで、センターシートへのアクセスも容易だという。ジェット戦闘機風にデザインされたアナログのスイッチ類や計器類は、比較的シンプルだが、スイス時計並みの品質で作られている。

サイドに設置された2つのラゲッジコンパートメントは、F1と同様に広々としている。高価なコレクターズカーではあるが、マレー氏は日常的に使えるクルマであるとしている。

ゴードン・マレーT50
ゴードン・マレーT50    ゴードン・マレー・オートモーティブ

「T50は完全なロードカーです。だからこそ、パッケージングやラゲッジスペースの新基準を打ち立てることができたのです。乗降性、ラゲッジ容量、耐久性、メンテナンス性、サスペンション設定など、あらゆる面でF1を凌駕しています。また、任意でエンジンマップを選択でき、あらゆる状況に対応したドライビングモードが確保されています」

開発時にベンチマークとしたクルマは、30年近く前のマクラーレンF1だったという。それは、自然吸気のV12エンジンとマニュアル・トランスミッションスを搭載した、センターシートの超軽量スーパーカーという条件のクルマを、これまで誰も作ろうとしなかったからである。

車両重量はわずか986kgと言われており、これはマレー氏が「平均的なスーパーカー」と呼ぶクルマの約3分の2である。重量を抑えるためには、単に新しい素材を使うだけではなく、意識を変えていく必要があると考え、開発チームは毎週のようにミーティングを行っていたそうだ。

カーボンファイバー製チューブシャシーの重量は、全パネルを含めても150kgに満たない。ナット、ボルト、ブラケット、ファスナーなど、約900個の部品が軽量化のために個別精査されている。

エクストラック社製の横置き6速MTは、新しい薄肉鋳造技術を用いており、F1のものよりも10kg軽くなった。また、コスワースV12は、F1のBMW製ユニットよりも60kg軽量化されている。カーボン製のドライバーシートで7kg、助手席でも3kgの軽量化が図られている。

なぜ、そこまでの手間をかけるのか。それは、重いクルマは軽いクルマの恩恵を決して受けられないからだ、とマレー氏は言う。軽さとエンジンのポテンシャルにより、T50のパワーウェイトレシオ(出力重量比)は従来のスーパーカーを凌駕するものとされる。

排気量3994ccのV12エンジンは、最高出力660psを発揮する。しかし、ニュルブルクリンクのラップレコード更新や、驚異的な加速タイムには興味がないという。「そのようなことにはまったく興味がありません。わたし達は、これまでに作られたどのスーパーカーよりも、最も走りがいのあるドライビング・エクスペリエンスを提供することに焦点当ててきました」

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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