もの足りない437kmと150kW レクサス RZへ英国試乗 競争の厳しいクラスで挑む

公開 : 2023.03.17 08:25

急速に拡充が進むプレミアム・ブランドのBEV。bZ4Xのコンポーネントを利用したRZの仕上がりを、英編集部が評価しました。

基礎構造はe-TNGAプラットフォーム

近年の主力カテゴリーといえるクロスオーバーやSUVは、スポーティさを強調する例が少なくない。新しいRZのプレゼンテーションでレクサスはその言葉に触れず、妙に新鮮に感じてしまった。

このSUVは、同社のフラッグシップ・バッテリーEV(BEV)に据えられる。信頼感や操縦性、快適性といった言葉を、彼らは前面に打ち出している。とはいえ、システム総合での最高出力は313psもあるから、加速が鈍いわけではない。

レクサスRZ 450e(欧州仕様)
レクサスRZ 450e(欧州仕様)

レクサスとして、本腰でBEVに取り組んだ最新の成果でもある。ガソリンエンジンで走るモデルをベースにしたUX 300eもひと足先に提供されているが、販売台数は伸び悩んでいる。

RZが基礎構造とするのは、BEV専用のe-TNGAプラットフォーム。トヨタbZ4Xスバルソルテラが採用していることで、ご存知かもしれない。

駆動用バッテリーは、額面上は71.4kWhがうたわれるが、実容量は64kWhになる。これは同クラスのライバルに劣るものの、7.4kWhと大きめの安全マージンを確保することで、10年後でも利用可能な容量は新車時の90%が保証されている。

長く乗ろうと考えている人にとっては、喜ばしい設定だと思う。数年縛りの残価設定プランで乗る場合は、余りメリットを感じないかもしれないが。

航続距離はもの足りない437km

レクサスは、エネルギー効率の高い駆動用モーターとその制御で、バッテリー容量を補えるとしている。実際、カタログ値の電費は5.4km/kWhから5.9km/kWhと良好で、テスラに接近していることは事実だ。

通常は、リアアクスルを駆動する109psの駆動用モーターがRZを走らせる。高負荷時には、フロントアクスル側の203psのモーターも働き出し、必要なパワーが路面へ展開される。

レクサスRZ 450e(欧州仕様)
レクサスRZ 450e(欧州仕様)

それでも、航続距離は437kmともの足りない。英国市場で支持を集めるであろう20インチホイールを履くと、405kmへ縮まってしまう。

今回試乗した気温10度という環境では、電費は4.8km/kWh前後で安定していた。これは、bZ4Xで得られる数字と近い。それでも、航続距離は305km程度となり、ライバルとなるジェネシス・エレクトリファイドGV70やBMW iX3には届かない。

DCの急速充電能力も最大で150kWまでと、プレミアム・ブランドとしては誇れるほどではない。充電ソケットの仕様は、欧州で一般的なCCSが装備されていた。

さて、要求の厳しいプレミアムSUV市場で戦うことになるRZの印象は、レクサスの主張通り、信頼感や操縦性、快適性といった特徴では優れるといえる。特に、アダプティブダンパーが組まれていないにも関わらず、乗り心地は滑らかで落ち着いていた。

ちなみに、試乗場所はフランスの一般道。時間が制限されていたため、より確かなレポートをお伝えできるのは、英国へ場所を移してからになることをご了承いただきたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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