パワートレインに勝るシャシー ポールスター2 BSTエディション270へ試乗 専用ダンパー獲得 前編
公開 : 2023.03.26 08:25
ボルボが擁するBEVメーカー、ポールスターの手による475psで四輪駆動の2。限定270台の特別仕様を英国編集部が評価しました。
高性能BEVの可能性を探る存在
欧州では急速に普及が進むバッテリーEV(BEV)だが、高性能モデルにどの程度の対価を市場は支払うのか、はっきりとした傾向は見られないようだ。それ以前に、多くのメーカーは現実的な価格で訴求力のあるモデルを提供することへ、頭を悩ませている。
価格を釣り上げずに、充分な航続距離を与えられるか。運転を楽しく感じられるような、軽い車重に抑えられるか。ライバルより欲しいと思えるスタイリングを創出できるか。挑戦はまだまだ続くだろう。
それでも、スウェーデンに拠点を置くBEVメーカーのポールスターは、一歩進んだポジションにあるのかもしれない。中国の資本力と小さな規模を活かし、フットワークが軽い。高性能なモデルに対しても果敢に取り組んでいる。
空力特性に優れ航続距離が長いグランドツアラーや、2シーターのスタイリッシュなスーパーカー、広い車内空間を備える有能なクロスオーバーなどを、順次提供していく計画を立てている。恐らく、ほかにも未公表のモデルを考案中だろう。
それら高性能BEVの可能性を探る存在といえるのが、今回試乗したポールスター2 BSTエディション270となる。特別なサスペンションを装備し、モータースポーツ・オリエンテッドな操縦性への需要を探る狙いがあるようだ。運転体験の可能性も。
ツインモーターで475psと69.2kg-m
この特別な2が作られる数は、世界全体で270台と限定的。あくまでも、その後に続くモデルの序章といえる。そのうち40台がグレートブリテン島へやってくるが、残念ながらすべてに先約があるという。
たった40台なら、すぐに売れても当然とお考えかもしれない。しかし、この2 BSTエディション270の英国価格は、6万8990ポンド(約1110万円)もする。全長が300mmも長いポルシェ・タイカンを、オプション付きで注文できる金額なのだ。
加えて、フォード・マスタング・マッハE GTやキアEV6 GTなどとは異なり、パワーアップされているわけでもない。BSTエディション270が搭載する駆動用モーターは、2 ロングレンジ・デュアルモーター・パフォーマンスパッケージと同じユニットだ。
といっても、充分にたくましい。ツインモーターで総合475psの最高出力と、69.2kg-mの最大トルクを生み出す。
ポールスターは、あえてこの仕様の駆動用モーターを選択したと主張する。ドライバーが現実的に使い切れないパワーを与えるのではなく、運転の魅力を高める、意味のあるアップデートへ焦点を向けたという。
確かに、鋭い加速力を実現させたBEVであっても、現実的にそれを発揮できる環境は極めて限られる。静かで穏やかな移動が好まれる場合も多い。彼らの主張は納得できる。
駆動用バッテリーの容量は75kWh。航続距離は最長487kmがうたわれる。