スピリットは宿すのか アルファ・ロメオ・トナーレ アウディQ3 コンパクトSUV比較 後編

公開 : 2023.04.01 09:46

アルファ・ロメオもSUVでPHEVの時代。ブランド復調の期待が掛かる新モデルの実力を、競合との比較で英編集部が探ります。

車内が広く実用性では有利 雰囲気もいい

車内空間は、前編で触れた通りアルファ・ロメオトナーレの方がアウディQ3より広い。荷室容量も380Lに対し385Lと僅かに大きく、実用的な形状ということもあって、数字以上にファミリーカーとしての使い勝手は良さそうだ。

長い伝統を持つイタリアン・ブランドの凝り固まった姿勢が、解きほぐされた一片が現れているのかもしれない。Q3の車内は、ハッチバックのA3と比べて目立った違いまでは得られていない。実用性で勝るのはトナーレだろう。

オレンジのアウディQ3 45 TFSIe Sラインと、グリーンのアルファ・ロメオ・トナーレ PHEV Q4ヴェローチェ
オレンジのアウディQ3 45 TFSIe Sラインと、グリーンのアルファ・ロメオ・トナーレ PHEV Q4ヴェローチェ

インフォテインメント・システムは、グラフィックの精細さでQ3がやや有利。インターフェイスの構造も理解しやすい。

トナーレのインテリア素材の質感や、内装トリムの光沢感は、若干一貫性に欠ける。そのかわり、印象を高めるアンビエントライトが実装されている。フロントシートの調整域はやや狭く、サポート性はもう少し高くてもいい。

インテリアが与える印象はアルファ・ロメオらしくもある。人間工学的に整理された設計や、褒められる全体的な仕上げ品質、個性的なデザイン処理など、雰囲気は悪くない。

ディティールも凝っている。アルファ・ロメオの紋章のモチーフが、目立たないところにも展開されていたりする。

筆者が気になった点は、左ハンドル車でも、メーターパネルの中央とステアリングホイールの中心線が一致していないこと。2023年の殆どのクルマは、この問題を解決済みなのだが。

ブランドらしくないドライビング体験

Q3のインテリアの設えも、水準は決して低くない。このブランドらしく素材の質感は高く、ソリッド感がある。

だが、概してアウディのコンパクトモデルは、格上モデルのように入念な作り込みや高級感までは備わらないことが多い。トナーレと比較して、明らかな強みといえるほどではないだろう。

アルファ・ロメオ・トナーレ PHEV Q4ヴェローチェ(欧州仕様)
アルファ・ロメオ・トナーレ PHEV Q4ヴェローチェ(欧州仕様)

さて、静止した状態でドイツの競合に肉薄できた過去のアルファ・ロメオでも、肝心の走りとなると及ばないことが多かった。しかし今回はプラグイン・ハイブリッド(PHEV)のSUVだから、異なる結果でも不思議ではない。実際、2台の個性が大きく現れていた。

トナーレは、ドライバーズカーとしての魅力をストロングポイントにするモデルではない。Q3と同様に。重い駆動用バッテリーを搭載し、車重は1835kgとボディサイズに対して軽くない。

もちろんPHEVだから、駆動用バッテリーだけで走行可能な能力を得ている。雪が舞う寒い環境でも、トナーレは48kmほど走れることを確認した。Q3は約32kmと、その差は小さくない。

ドライビング体験は、正直なところブランドらしくない。エンジンサウンドは聴き応えが薄く、駆動用モーターが組み合わされたパワートレインは反応がやや鈍い。速めの速度でカーブへ侵入すると、身のこなしには重たさがにじみ出る。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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