最初から最高だった メルセデス・ベンツSクラス W116 280SEから450SEL 6.9まで 前編
公開 : 2023.04.08 07:05
多くの著名人に愛された450SEL 6.9
この450SELと、標準ホイールベース版の450SEは、1974年に欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。オイルショックによるガソリン価格の高騰に見舞われるなかで、販売は好調だった。
ボディが重くギア比が高いわけでもなかったW116型は、燃費が良くなかった。それでもアメリカでは飛ぶように売れ、提供が追いつかなかったほど。現地のキャデラックやリンカーンは、卓越したドイツ車に並ぶ訴求力を獲得できていなかった。
英国でも、ジャガーXJ12の方が速く乗り心地は洗練されていたものの、支持を集めた。輸入代理店は、特に最上級の450SELを積極的に輸入している。ヘッドライト・ワイパーにパワーウインドウ、バキューム式の集中ドアロックといった装備を満載して。
続く1975年には、6.9Lという大排気量のV8エンジンを積んだ、450SEL 6.9が登場。通常の4.5L版とは、トランクリッドの小さなエンブレムとワイドなタイヤで、違いを控えめに主張した。
この450SEL 6.9は、F1ドライバーだったジェームス・ハント氏を筆頭に、多くの著名人から愛された。単に大型エンジンのW116型というわけではなく、操縦性に優れ、最高速度も高かった。さらに、当時のアメリカの排出ガス規制にも対応できていた。
ハイドロニューマチックを採用
450SEL 6.9に積まれたM100型というV8ユニットは、重心を落とすためドライサンプ化。排気量は6834ccまで拡大され、最高出力290psを実現していた。0-100km/h加速7.2秒は、この大きさのサルーンとして当時は相当なダッシュ力といえた。
Sクラスのフラッグシップとして上質な乗り心地を得るため、サスペンションにはハイドロニューマチックを採用。技術的にはシトロエンのものと似ているが、特許権を侵害しないほど内容は異なっていた。
通常のW116型に装備されるコイルスプリングのかわりに、ガスが充填されたスフェアとダンパーがボディを支持。スプリングのようにもダンパーは動き、圧力が高まるほど硬さが増した。フルードの量で車高の変更も可能だった。
450SEL 6.9の価格は、アメリカでは3万8000ドル。英国でも、V12エンジン搭載のジャガーより1万ポンドも高額で売られた。そのため製造数は限られ、最多の1979年でも1839台。現在ではマニアからの注目度が高い、貴重なW116型となっている。
この続きは後編にて。