最初から最高だった メルセデス・ベンツSクラス W116 280SEから450SEL 6.9まで 後編
公開 : 2023.04.08 07:06
最も速く感じられるのは280SE
乗り心地は、高速域で実力が発揮される。スチールコイルの場合、低速域では少しゴツゴツ感が目立つ。対照的に450SEL 6.9のハイドロニューマチックは、速度域を問わず上質。若干フワ付いた印象もあるが、最上級であることを物語る。
3台の初代Sクラスで最も速く感じられるのは、意欲的に回頭していく280SEだろう。350SEも想像以上に活発に走るが、乗り比べてみると驚かされる。直列6気筒でフロントが軽いぶん機敏だ。
280SEのエンジンはハスキーなノイズを放ち、中回転域で積極的にパワーを生み出す。滑らかなツインカム・ヘッドが、200km/hまで躊躇することなく加速させる。150km/h前後での巡航走行など朝飯前だろう。
湧き出るトルクには明確な山があり、回転数の上昇とともにパワー感が高まる。V8エンジンに組み合わされる3速ATとは異なり、直6エンジンには4速ATが載り、ギア比やシフトアップ・ポイントの違いなどでも活発さが生まれている。
剛性感の高いシフトレバーと洗練された変速感も、1970年代の新基準だった。W116型の後継モデルとして登場した、進化版の2代目Sクラス、W126型も同様だった。基礎となる哲学や技術的要素は、1980年代まで継投されている。
Sクラスは最初から最高だった
世界市場を見据えて開発された初代メルセデス・ベンツSクラスは、現代まで続く、ラグジュアリー・サルーンのデフォルトという揺るがない評価を確立した。1972年にも美しいサルーンや速いサルーンは存在したが、これほど高完成度の例は唯一といえた。
最も安全で、秀でた信頼性と製造品質を併せ持つ新基準だった。同年代のモデルと同様にボディは錆びやすいことも事実だが、季節を問わず長距離を走る乗られ方が日常といえ、避けがたい犠牲でもあった。
孤高の450SEL 6.9は、現在でも伝説の1車種に数えられる。しかし、他のW116型にも、それぞれの魅力が存在することを改めて確認することができたと思う。Sクラスは最初から最高だった。
メルセデス・ベンツW116型(1972〜1980年/英国仕様)のスペック
英国価格:6995ポンド(350SE/新車時)/4万5000ポンド(約724万円)以下(現在)
販売台数:47万3035台(W116型合計)
全長:4960-5118mm
全幅:1867mm
全高:1410mm
最高速度:189-233km/h
0-97km/h加速:7.2-11.5秒
燃費:4.6-8.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1610-1842kg
パワートレイン:直列6気筒2746cc自然吸気DOHC/V型8気筒3499-6834cc自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:160ps/5500rpm-290ps/4250rpm
最大トルク:22.9kg-m/4000rpm-55.8kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル/3速・4速オートマティック