220iとM240iの間の最適解 BMW 230i Mスポーツへ試乗 ドライバーの理想像へ接近
公開 : 2023.03.31 08:25
シンプルな後輪駆動に245psの直4ターボが組み合わされた、2シリーズ・クーペ。英国編集部が一般道でその魅力へ迫りました。
220iとM240iの間の丁度いいポジション
われわれが愛する、手頃な価格のFRモデルはすっかり数が減ってしまった。日本からやってきた期待のトヨタGR86は、欧州への導入台数があまりにも少なすぎる。テイラー・スウィフトのコンサートチケット級に入手困難で、恨めしく思えてしまう。
しかし、まだ諦める必要はない。後輪駆動で2+2のクーペはドイツにも存在する。今回試乗した230i Mスポーツ・クーペは、高バランスの1台といえる。
英国価格は、GR86より1万ポンド(約161万円)ほどお高い。そのかわり、リアシートの空間にはゆとりがあり、インテリアは質感が高く、より洗練されている。車重は300kg以上重いが。
最近の2シリーズといえば、4ドアのグランクーペやミニバンのアクティブツアラーへの注目度が高いが、それらはいずれも前輪駆動。だが、2ドア・クーペが採用するのは4シリーズと同じプラットフォーム。長さを縮めつつ、後輪駆動を維持している。
英国市場の場合、183psを発揮する220iが2シリーズ・クーペのエントリーグレードとなる。ただし、パワーは少しもの足りないかもしれない。パワフルなM240i xドライブという選択肢もあるが、車重は増え、価格は高く、複雑な四輪駆動システムが載る。
その中間に位置する230iは、丁度いいポジションに着地している。正式発表されたM2まで気張る必要は必ずしもない。2シリーズ・クーペのスイートスポットといえそうだ。
ご先祖から受け継がれたBMWらしい個性
エンジンは、220iと同じ2.0L 4気筒ターボガソリンながら制御が異なり、最高出力は62ps、最大トルクは10.2kg-mも増している。英国価格は3760ポンド(約60万円)の割増しになるものの、正当化する違いといえる。
特に、40.7kg-mという豊かな最大トルクが1600rpmから発揮され、素晴らしいと表現したい動力性能を叶えている。高い完成度のシャシーを味わい尽くせる。
245psの最高出力を受け止めるべく、タイヤはグリップの高いピレリPゼロを履く。トラクションは相当なものだが、スタビリティ・コントロールの効きが弱まるドライブモードを選択すれば、一般道の速度域でも自由度の高い操縦性を楽しめる。
太い最大トルクを活用し、カーブではリアタイヤを踊らせることが可能。ステアリングの反応は即時的で鋭い。ご先祖から受け継がれたBMWらしい個性を、現代的なスタイリングに包まれながら堪能できる。
サスペンションは、調整式ではない一般的なダンパー。それでも、オプションの19インチ・ホイールを履いていても、乗り心地が硬すぎることはない。
管理状態の悪い英国のアスファルトでは少々揺れが目立ち、落ち着いているとは呼びにくい。とはいえ、ドライブモードの設定で悩む項目が1つ減るとも考えられる。
基本的には標準のコンフォート・モードで充分。チャレンジングな区間まで足を伸ばしたら、8速ATをスポーツモードかマニュアルモードに切り替えれば、ドライバーの気持ちに不足なく応えてくれる。シンプルでストレスフリーだ。