元に戻せる電動化キット エレクトロジェニック・ポルシェ911 964へ試乗 充足感は低くない 前編
公開 : 2023.03.30 08:25 更新 : 2023.03.30 08:44
英国のエレクトロジェニック社がBEV化キットを開発。駆動用モーターをリアに積んだ964を英国編集部が評価しました。
ディフェンダーとEタイプ、911用のキット
電気自動車になったクラシック・スポーツカーへ、魅力を感じるだろうか。好き嫌いは明確にわかれそうだが、少なくとも需要は小さくないようだ。グレートブリテン島の中南部に拠点を置くエレクトロジェニック社が、事業を次のフェーズへ移せるのだから。
同社はこれまで、シトロエンDSやデイムラー・マジェスティック、TVRサーブラウなど、多くのモデルのバッテリーEV(BEV)化、エレクトロモッドへ取り組んできた。海外のチューニングガレージと提携関係を築くなど、ビジネスは順調なようだ。
特にエレクトロモッドへの注目度が高いのが、アメリカ・カリフォルニア州。クラシックカーを所有しているものの、年代物の内燃エンジンを維持するのが難しいと考える、比較的若い層が関心を寄せているらしい。
ロンドンの北西に位置するノース・オックスフォードの本社工場では、毎年数台のクラシックカーがBEVへ生まれ変わっている。しかし今回、拡大するニーズへ応えるべく、3車種へ特化したエレクトロモッド・キットの製造・販売をスタートさせたという。
対象となるのは、1983年以降に製造されたランドローバー・ディフェンダーと、ジャガーEタイプ、そしてGシリーズと呼ばれる後期の901世代から964世代までの、空冷のポルシェ911だ。いずれもクラシックカーとして人気は高い。
218psの駆動用モーターへ載せ替え
このキットには仕様に応じて、43kWhから93kWhの駆動用バッテリーと、充分なパワーの駆動用モーターが含まれる。ベース車両のマニュアル・トランスミッションを残すか、ドライブトレインを丸ごとコンバージョンするか、選択も可能だという。
急速充電能力は、DCで最大50kWに対応する。エレクトロジェニック社は今後のビジネスを通じて、さらに対応車種を増やそうと考えている。
ポルシェ911の場合、エレクトロモッド・キットは2種類が設定されている。今回試乗したモデルへ組まれていたのは、最高出力が控えめで安価な「E62」というもの。ベース車両のサスペンションやブレーキを強化せずに、コンバージョンできる内容となる。
駆動用モーターは最高出力218ps、最大トルク31.6kg-mを発揮し、オリジナルと同等の動力性能が得られるよう設計されている。0-97km/h加速は、約5.0秒でこなすとうたわれる。車重は120kg増加するらしい。
パワフルな方は「E62S」と呼ばれ、最高出力は326psまで上昇する。このキットを組む場合は、シャシーまわりの強化を強く推奨している。
キットといっても、ガレージでアマチュアが組み込めるものではない。協力関係にあるチューニングガレージへ車両を持ち込み、レストモッドの一環として作業するレベルだと考えるべきだろう。高電流に対する知識も必要だ。