包みきれない2710kg BMW XM 総合653psのPHEV Mなら更に高みを目指せる 後編
公開 : 2023.04.01 08:26
BMW M社の独自モデルとして2番目に当たるXM。最高のXとMが体現されたというSUVを、英国編集部が評価しました。
Mでも包みきれない2710kgの車重
BMW XMの実用性は、サルーンのBMW M5より優れるものの、同クラスのSUVと比べて勝るとまではいえないだろう。Mディファレンシャルと燃料タンクが配置される都合上、荷室の床面が高く重い荷物は積みにくい。
荷室容量は527L。ポルシェ・カイエンやランボルギーニ・ウルスより小さい。BMW X5 Mの方が使い勝手は良好で、後方の視界も広い。XMが普段使いに適さないわけではないけれど。
観察はこの程度にして、実際に走り出してみよう。さて、BMW M渾身のXMは、高性能SUVの新基準といえる高みに到達しているだろうか。M5 CSに通じるDNAを受け継いでいるだろうか。
果たして、快くYESとはいえなさそうだ。いつくかの弱点が含まれている。
まず、車重を包み隠すことが得意なBMW Mをもってしても、XMの2710kgまでは覆いきれていないようだ。プラグイン・ハイブリッドのランドローバー・レンジローバーと殆ど変わらない重さがある。
この重量を招いている要因の1つが、BMWのCLARモジュラー・アーキテクチャをベースにしていること。多用途でねじり剛性が高いぶん、軽くない。小柄なM3 ツーリングでさえ、1865kgある理由でもある。
さらにXMにはプラグイン・ハイブリッドのパワートレインが載っている。ボディも大柄だ。インテリアは豪華に仕立てられ、23インチの巨大なアルミホイールも履いている。
暴力的に目覚める4.4L V8ツインターボ
この車重で0-100km/h加速4.3秒は優秀といえるだろう。だが、653psに期待するほどの勢いはない。一般道を運転してみて、最新のMモデルへの期待値との距離を感じざるを得なかった。
パワートレイン自体には面白みがある。デフォルトのハイブリッド・モードで発進させると、駆動用モーターだけで静かに進み始める。アクセルペダルを更に傾けると、4.4L V8ツインターボエンジンが暴力的に目覚める。
内燃エンジンと駆動用モーターの両方が、個性的なサウンドを放つ。このデュエットが、過去にはないエキサイティングな体験を生んでいる。
丁寧に作り込まれたユニットらしく、ツインターボエンジンは高回転域まで意欲的に回る。反響用のパイプを介して、勇ましいエグゾーストノートが車内へ届く。
一方で、駆動用モーターはアクセルペダルへ敏感に反応するものの、低速域での制御には少々のムラが感取された。もう少し微調整を加えても良いかもしれない。
ステアリングも悪くない。多くの高性能SUVより素直に操れる。ワダチを追いすぎることはなく、感心するほど正確。しかし手のひらへ伝わる情報量は、ポルシェ・カイエンのように多くはないようだ。
サスペンションは、スチールスプリングにアダプティブダンパー、アクティブ・アンチロールバーという組み合わせ。特にフロント側は、ダンパーがより自由に伸縮できるよう、独自のコントロールアーム構成が取られている。