社運をかけた失敗作 お粗末なシティローバーと隠れた名車ストリートワイズ 誕生秘話

公開 : 2023.04.01 18:05

倒産寸前に追い込まれた英国の自動車メーカー、MGローバーは起死回生の一手として2台の小型車を投入します。結果的に会社を救うことができなかったものの、2台は性格のまったく異なるクルマでした。

会社を救えなかった名車と迷車

MGローバーは、満を持して投入したシティローバーとストリートワイズに望みを託していた。

しかし、MGローバーは2005年4月、10億ポンド以上の負債を抱えて破綻する。親会社BMWがフェニックス・ベンチャー・ホールディングスにはした金で売却してからわずか5年後のことであった。社名をローバーからMGローバーに改めたが、BMWが巧みに保持したミニとフォードに売却されたランドローバーという2つの貴重なブランド資産を失ったばかりである。

MGローバーを救えなかった「ストリートワイズ」と「シティローバー」を振り返る。
MGローバーを救えなかった「ストリートワイズ」と「シティローバー」を振り返る。

MG TFの好調な販売、ZR、ZS、ZTのヒット、英ロングブリッジの不動産の売却にもかかわらず、MGローバーは中国企業の手に渡る。社運をかけた2台の新型車、シティローバーとストリートワイズも会社を救うことはできなかった。これは、2台の(短い)物語である。

先進的なローバー・ストリートワイズ

2003年に登場したローバー・ストリートワイズは、ひときわ目立つ存在だった。MGローバーの当時のラインナップは、旧式化した25と45、洗練された75、人気のTFなどで構成されていた。SUV風に仕上げたハッチバックはまだ一般的ではなく、ストリートワイズは未知の領域に足を踏み入れることになったのだ。

タフな見た目とは裏腹に、ストリートワイズはまさに「路上」用に設計されている。ローバーはこれを「アーバン・オンローダー」と呼び、自動車業界では鼻で笑われたが、このアイデアは後のクロスオーバーや都市型SUVのトレンドを予見するようなもので、むしろ先見の明があるように感じられる。

ローバー・ストリートワイズ
ローバー・ストリートワイズ

「ストリートワイズは、普通のクルマよりもタフで、世界で最も困難な運転環境の1つである都市で生き残り、繁栄するよう意図的に設計されています」とローバーは述べている。

ストリートワイズは1999年に発売されたローバー25がベースになっているが、その25は1995年の200をベースとしている。25が「旧式」なら、200はもう「老朽」であり、先進的な新型車など作れるはずもなかった。でも、作ってしまったのだ。車高を上げ、ボディクラッディングやルーフバー、アロイホイールを装着し、インテリアに手を加えることで驚くべき進化を遂げた。

巧妙なことに、ストリートワイズは「The New Streetwise by Rover(ローバーの新型ストリートワイズ)」と銘打たれ、メーカー名よりもモデル名の方が強調されていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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