社運をかけた失敗作 お粗末なシティローバーと隠れた名車ストリートワイズ 誕生秘話

公開 : 2023.04.01 18:05

チープで陽気なローバー・シティローバー

ストリートワイズに遅れること数か月、新たに登場したシティローバーは、MGローバー最後の新型車である。また、1997年のローバー100(以前はメトロとして知られていた)以来のシティカーでもある。その実態は、インド製のタタ・インディカに、フランスのプジョー製1.4Lガソリンエンジンを搭載したリバッジモデルだった。

MGローバーはタタ・インディカをベースに、強化したスプリング、新しいダンパー、20mm低い車高を与え、グリルとバンパーにも改良を施した。トランクの「C I T Y R O V E R」の文字は、このクルマに英国車の威信を与えるためのものだが、空虚であると言わざるをえない。塗装の仕上がりの悪さとパネルの隙間の大きさが、このクルマの出自を示す最大の手がかりだ。

ローバー・シティローバー
ローバー・シティローバー

それでもシティローバーの価格は安く、エントリーモデルの「ソロ」が6495ポンド、スポーティな「スプライト」が7895ポンド、「スタイル」が8895ポンドからであった。現在の価値に置き換えると、1万875ポンド(約175万円)、1万3250ポンド(約210万円)、1万4900ポンド(約240万円)となる。ダチアを除くすべての企業が値上げを強行する現在では、かなりリーズナブルである。

運転席エアバッグ、3年6万マイル保証、6年間の穴あき防止カバーを標準装備し、ソロを除く全車にパワーステアリング、60:40分割可倒式リアシート、リモート式センターロック、CDプレーヤーを装備する。スプライトにはエアコンが、スタイルにはABSと助手席エアバッグが用意された。スタイル以外では、ABSは300ポンドのオプションだったが、EUの法改正で義務化された。

意外にも評価は悪くなかった?

クリス・ハリスという自動車ジャーナリストがシティローバーをレビューしてくれたのだが(英国ではそれなりに有名で、AUTOCARでも記事を書いたことがある)、彼の評価は驚くほどポジティブだった。

「大人4人がゆったりと座れ、リアの足元と頭上空間はフォードKaを凌ぐ。シャシーはうまくできているが、本来の環境を外れるとあまり役に立たない。悪くないクルマだ。利用可能なリソース(開発資源)を考えると、その努力の結果は本当に悪いものではない」

ローバー・シティローバー
ローバー・シティローバー

続いて、短所を挙げてみよう。ハリスは、ギアチェンジを「ひどい」、乗り心地を「せわしない」、グリップを「中程度」、インテリアを「悲惨」と評した。一番安いスコダ・ファビアの方が合理的だ、とも。

しかし、全体的にはむしろシティローバーを気に入っていたようだ。このことをソーシャルメディアを通じて彼に思い出させてみるのも面白そうだ。もしかしたら、愛車のプジョー205ラリーと入れ替える可能性もあるかも……。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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