社運をかけた失敗作 お粗末なシティローバーと隠れた名車ストリートワイズ 誕生秘話

公開 : 2023.04.01 18:05

時代遅れの設計 吹き荒れる逆風

シティローバーは、1998年12月にインドで発売された小型車がベースになっているので、約5年後に英国で発売されたときには、すでに時代遅れで陳腐化していた。他のメーカーが競争力を高めていたこともあり、「安かろう悪かろう」が消費者に受け入れられる時代はもう終わったのだ。エンジンは、車重の軽さも手伝って、軽快なパフォーマンスを発揮する。しかし、インテリアはメトロを惜しむ声が漏れるほどの出来である。

さらに悪いことに、MGローバーは、シティローバー1台につきタタにわずか3000ポンドしか支払っていないという報道によって、暴利を貪っていると非難された。2004年12月に行われた900ポンドの値下げはほとんど効果がなく、計画されていたシティローバー・ターボも会社とともに崩れ去った。MGローバーは年間2万台の販売を見込んでいたが、販売台数はわずか9218台にとどまった。

ローバー・シティローバー
ローバー・シティローバー

シティローバーは、ジェレミー・クラークソン、リチャード・ハモンド、ジェームズ・メイの犠牲となったことで有名である。MGローバーが自動車番組『Top Gear』にレビュー用の車両提供を拒否したため、ジェームズ・メイは顧客に扮してディーラーに潜入し、試乗車を拝借した。手頃な価格の小型車のファンとして知られるメイは、シティローバーを「この番組で運転した中で最悪のクルマ」と言い放った。

英国では現在、176台のシティローバーと約600台のストリートワイズが残っており、中古車価格は前者が約1000ポンド(約16万円)から、後者が約2000ポンド(約32万円)からとなっている。もし、どちらかを購入するのであれば、インドのお下がりではなく、装甲付きのローバー25、もといストリートワイズを選ぶのが賢明だろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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