先代タイプRとの共通点は? ホンダ・シビック 長期テスト(4) ホットハッチは最高のカテゴリー

公開 : 2023.04.08 09:45  更新 : 2023.06.29 08:47

SUV人気で従来的なハッチバックは減少傾向。ホンダの意欲作はその流れに一石を投じるのか。英国編集部が実力を確かめます。

積算1万798km 先代の高性能版と比較

「思いっきり飛ばして!」。筆者の6歳の息子が叫んだ。

アメリカのアクション・アニメの見すぎかもしれない。でも、巨大なリアウイングと3本出しのマフラーが、男の子の興奮を誘わないわけがない。クルマ好きの場合は。

ブルーのホンダ・シビック 2.0 i-MMD e:HEV アドバンスと、グレーのFK8型ホンダ・シビック・タイプR
ブルーのホンダシビック 2.0 i-MMD e:HEV アドバンスと、グレーのFK8型ホンダ・シビック・タイプR

今筆者が乗っているのは、先代に当たるFK8型のホンダ・シビック・タイプR。これまでに生産された数多くのホットハッチのなかでもベストに数えられる1台で、歴代のホンダ車でも最高水準といえる完成度を備えている。

長期テストでは、ベーシックなホンダ・シビック e:HEVの優れたドライビング体験へ何度か触れてきた。そこで、同モデルの高性能版と比較してみたいと考えたのだ。

本来は最新版のFL5型シビック・タイプRとの乗り比べがベストだったが、原稿の締切とスケジュールを合わせることができなかった。それでも、充分な発見はあるはず。

秀抜のシビック・タイプRの世代交代を叶えた、ホンダを称賛せずにはいられない。FK8型が発売されたのは2017年。同時期のライバルには、フォード・フォーカスRSとルノーメガーヌR.S.の2台が含まれるが、いずれもモデルチェンジしていない。

フォルクスワーゲン・ゴルフGTIは新型へ交代を果たせたが、ホットハッチ自体は斜陽傾向。クロスオーバーやSUVの人気へ押され、バッテリーEVの開発へ予算が割かれていることも影響を与えている。

クルマを全身で体感できる最高のカテゴリー

先代のシビック・タイプRへ試乗したことで、自動車市場の変化には思い残りがあると改めて感じた。コンパクトなボディと、短いホイールベース。マニュアルのトランスミッションに、シャープなサスペンション。直接的な運転体験を堪能できる。

ホットハッチは、活き活きとしたクルマを全身で体感できる、最高のカテゴリーだ。アリエル・アトムなど特別なモデルを除いて。

ブルーのホンダ・シビック 2.0 i-MMD e:HEV アドバンスと、グレーのFK8型ホンダ・シビック・タイプR
ブルーのホンダ・シビック 2.0 i-MMD e:HEV アドバンスと、グレーのFK8型ホンダ・シビック・タイプR

FK8型には複数のドライブモードが用意されているが、実際に運転する場合は中間のスポーツ・モードが最適。適度にアクセルレスポンスが引き締まる一方で、ダンパーの硬さは我慢できる範囲に留まる。

試乗した郊外の一般道には、逆バンクが付いたコーナーや、コブが隆起した区間などが混在している。+Rモードで1度走ってみたが、少々サスペンションが硬すぎた。

筆者が年令を重ねたこともあるだろう。だが、ちょっと機敏すぎるようにも感じた。スポーツ・モードなら、適度に角が丸められ運転しやすい。

積極的に運転してみて、どちらのシビックも素晴らしいと実感した。先代のタイプRも、現行型のe:HEVも、路面が荒れた区間で見事な操縦性を保つ。終始落ち着きを保ち、ドライバーに操れるという自信を与えてくれる。舗装の穴を通過しても変わらない。

一部のライバルは、隆起部分でサスペンションが処理しきれず強い衝撃を伝え、乗員を激しく揺さぶることがある。しかし、2台のシビックに粗野な振る舞いはない。印象的なほど流暢に、カーブの連続する区間を進んでいく。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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