レクサスRX 詳細データテスト 高級で快適 パワートレインは優秀 シャシーのスポーティさは不足
公開 : 2023.04.02 20:25 更新 : 2023.04.04 02:06
操舵/安定性 ★★★★★★☆☆☆☆
パワートレインが重量のかさむPHEVではなくても、RX500hは大型SUVセグメントにおいて、アジリティやハンドリングバランス、ボディコントロールの新たなベンチマークにはなれなかった。価格を考えると、これは驚きであり、残念に思うという声も上がるだろう。
しかし、歴代RXを知るドライバーであれば、おそらくは想定内だろう。彼らの優先事項は快適性や高級感、静粛性やイージードライブな利便性だからだ。結局のところ、レクサスの購買層にそっぽを向かれるようなクルマにはなっていない。
独特な走りのキャラクターはレクサス・ドライビングシグネチャーと銘打たれ、かなり明確に定義されている。方向転換のチューニングは、急激さよりスムースさを目指したもの。ボディコントロールはフラットで抑えの効いた挙動だが、硬さやアグレッシブさはない。ステアリングフィールは豊富だが、なめらかかつ精密で、活発な感じではない。ターンインは予測が効き、そこからバランスの取れた、落ち着いて正確な、腰のすわったライン取りでコーナーを抜けていく。
そう聞くと、控えめでおとなしいと思われそうだが、ゆったり曲がりくねった道ではそう表現していいだろう。スプリングはソフトで、アメリカの高速道路向けの乗り心地を思わせる。舗装のいいところで速度を上げると、路面をほとんど知覚できないくらい、歩幅が大きい感じの走りをみせて、中くらいの隆起などは吸収してしまう。
しかし、複雑なカントリーロードではそうはいかない。道の中央が高くなり、盛り上がりが道を横断し、溝がはっきり刻まれているような路面では、バネ上が横にもじもじ身じろぎするようになって、急にこのクルマのサイズと重さが意識され流ようになる。
アダプティブダンパーは、どのモードを選んでも、制御すべきボディ挙動が多くなると早々に音を上げる。のたうったり、激しいロールやピッチが出たりはしないが、ヘッドトスはかなり多い。
よりタイトなコーナーでは、四輪操舵も同じく、ライバルに比べればおとなしいものだ。ターンインでのRX500hは、目に見える食いつきや敏捷性が感じられない。速いコーナリングをすると、後輪のトルクベクタリングも体感できず、逆にエンジンのトルクが前輪へ突如として加わり、その後のコーナリングの安定感が乱されてしまう。
そこそこのスピードで、束の間その走りを楽しみ、正確な運転をする限り、これはいいクルマだ。しかし、エンスー好みの走りを追求できるものではない。リラックスしたペースで走ることを想定したクルマだという点は、RXのどのモデルでも同じことが言える。