オイル交換だけで265万円 ブガッティ・ヴェイロン 英国版中古車ガイド 2000年代の量産車最速

公開 : 2023.04.07 08:25

地球を小さく感じさせる内燃時代の偉業

ヴェイロンで注目するべきは、猛烈な最高速度を追い求めた技術面だけではない。四輪駆動システムとワイドな20インチ・タイヤが、コーナーでは絶大なグリップ力とトラクションを発揮。常に速く、落ち着いて運転できる。

しかも、市街地ではフォルクスワーゲン・ゴルフと同じくらい扱いやすい。高速道路では、上空1万mを飛行する飛行機のように終始安定してもいる。

ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)
ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)

インテリアは、プライベートジェットのように豪奢。後方視界には優れないが、シートは上質なレザーで仕立てられ、ウインカーレバーは軽量なマグネシウム製。サウンドシステムも一級品で、新車時84万ポンドという金額に妥当性を与えていた。

すべてがハイパーだったヴェイロンだが、近年はプレミアが付き取り引き価格は上昇中。ちなみに、右ハンドル車は存在しない。

ブガッティ・ヴェイロンは、誕生したことを称賛するべきモデルの1台といえる。地球を小さくすら感じさせる、内燃エンジン時代の偉業といっていいだろう。

新車時代のAUTOCARの評価は

ステアリングホイールを握ると、想像以上にドラマ性が薄い。無限に続くような加速の体験を、非現実なものに感じさせるほど。

路面が乾いた状態でアクセルペダルを踏み込めば、四輪駆動システムが巨大なトルクを知的に分配していくさまを感じ取れる。平然と、恐怖を感じさせることなく。

ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)
ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)

ステアリングの反応は正確で、乗り心地はしなやか。一般的なスポーツカーと変わらないほど簡単に、一般道を飛ばすことも可能だ。(2011年3月2日)

購入時に気をつけたいポイント

リコール

さすがのヴェイロンでも、リコールがいくつか出ている。1つ目は燃料計の不具合で、ガソリンが減っていても満タンだと表示される可能性があるというもの。ガソリンを激しく消費するヴェイロンの場合、重要な不備といえる。

もう1つは、ボディ下面のアルミニウム・プレートが腐食して脱落する可能性があるという内容。2006年から2010年にかけて製造されたヴェイロンが対象だった。購入時は、念のため下回りを確認しても良いだろう。恐らく、ディーラーで対応済みだと思うが。

ジャッキアップポイント

ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)
ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)

2006年から2010年に製造されたヴェイロンでは、ジャッキアップポイントの強度が足りず、ジャッキがボディへ当たってしまうことがある。変形していないか確認したい。

リアバンパー

中東地域や北米向けに作られたヴェイロンは、リアバンパーのナンバープレート用エリアの形状が異る。欧州向けの場合は、ナンバープレートの形に合わせて横に長い。

トランスミッション

巨大な最大トルクを受け止めるトランスミッションは、ブガッティの技術者によって定期的な点検が必要。これまでの整備記録と調子を確かめたい。新しいユニットへの載せ替えには、数10万ポンド(数1000万円)の費用が求められる。

ホイールとタイヤ

400km/h以上の最高速度を安全にこなすため、タイヤとホイールは3年毎の交換が推奨されている。タイヤは特注のミシュラン・パイロットスポーツPAX。アルミホイールとのセットで、3万ポンド(約483万円)程は見ておきたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    英国編集部。英グラスゴー大学を卒業後、モータージャーナリストを志しロンドンに移住。2022年からAUTOCARでニュース記事を担当する傍ら、SEO対策やSNSなど幅広い経験を積んでいる。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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