後席はロールス・ロイス級の広さ ジェネシスG90へ試乗 独ブランドとのギャップが見える 後編

公開 : 2023.04.09 08:26

ジェネシスのフラッグシップ・サルーンがモデルチェンジ。実力を高めるレクサスのライバルを、英国編集部が評価しました。

外界との高い隔離性 予想以上に運転も楽しめる

2代目へモデルチェンジした、韓国ジェネシスのフラッグシップ・サルーン、G90。通常ホイールベース版では、3.5L V6ツインターボエンジンが380psを発揮する。

今回試乗したのは、ロングホイールベース版。これにはe-SCと呼ばれる電動スーパーチャージャーも加勢し、最高出力は414psまで高められている。

ジェネシスG90 プレステージ3.5T e-SC(韓国仕様)
ジェネシスG90 プレステージ3.5T e-SC(韓国仕様)

G90の風格ある見た目に相応しい、たくましい動力性能が与えられている。上質なだけでなく、必要になれば怒涛の加速力も披露する。燃費は8.5km/Lと、褒められる数字ではないが。トランスミッションは8速ATが組み合わされる。

サスペンションは、マルチリンク式にエアスプリングという構成で、外界からの隔離性は高い。舗装されてから数10年が経過したアスファルトでも、最近工事を終えたばかりのように均してみせた。

そのかわり、タイトコーナーでは若干ボディロールが大きめ。とはいえ、不安になるほどではない。ステアリングホイールの重み付けは妥当で、全長5465mm、車重2207kgのサルーンとして、良好な応答性と回頭性を実現している。

後輪操舵システムも備わり、狭い市街地での小回りと、高速道路での高い安定性を両立している。ショーファードリブンのサルーンながら、運転も予想以上に楽しめそうだ。ヒョンデ譲りの、多彩な運転支援システムも備わる。

ラグジュアリー・クラスに一石を投じる

それでは、メルセデス・ベンツSクラスと比べた時はどうだろう。長い伝統を持つクラスリーダーは、孤高といえる水準に到達している。

数世代に渡って進化を重ねた結果、Sクラスの隔離性や乗り心地は、他ブランドの手が届きにくい領域にすらある。今回試乗した韓国の道路環境は、英国のそれと比較的似ていたが、G90は同等に路面からの入力を吸収できていなかったといえるだろう。

ジェネシスG90 プレステージ3.5T e-SC(韓国仕様)
ジェネシスG90 プレステージ3.5T e-SC(韓国仕様)

価格設定は、従来どおり競争力が高い。欧州市場へ導入される予定はないものの、G90のトップグレードでさえ、エントリーグレードのSクラスより低く設定されていることには唸らされる。

英国の通貨に換算すると、現地価格は約6万2000ポンド(約998万円)から約11万5000ポンド(約1851万円)の間に相当する。欧州の富裕層にとっては少し低すぎる設定といえるが、高級車を扱うタクシー会社やハイヤーとして活躍の機会はありそうだ。

それでも、ドイツ・ブランドが擁するモデルとは異なる個性を持ち、見事に設えられたサルーンを、少ないコストでガレージに収められることは事実。ラグジュアリー・クラスに一石を投じたいというジェネシスの狙いは、達成されているように思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グラハム・ヒープス

    Graham Heeps

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジム・ホルダー

    Jim Holder

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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