「マクドナルド流」のEV製造 英スタートアップ、発展途上国向け商用車発表

公開 : 2023.03.31 06:05

英国の新興企業Helixxは、アジアの発展途上国向けに小型EVを発表しました。バンやトラック、トゥクトゥクなどが事業者向けにサブスク販売される予定です。製造方法はファストフードからヒントを得たとのこと。

ファストフードのフランチャイズからヒント

英国の新興企業Helixxは、アジアの発展途上国向けに商用の小型EVを発表した。製造方法には「マクドナルド」にヒントを得た革新的なプロセスを導入しているという。

この小型EVは、L7e規制に従って設計されており、法的に最高出力20ps、最大重量450kg(貨物車では600kgまで)に制限される。

英Helixxの商用EVバン
英Helixxの商用EVバン    Helixx

商用タイプとして、2100Lの荷室を持つバンと、1.64平方メートルの荷台を持つピックアップトラックの2種類、また乗用タイプとしてミニバンとオープンタイプの2種類を用意し、最高速度は80km/hとなる。

バッテリーには、2kWhのリン酸鉄リチウム(LFP)を使用する。複数搭載することで4kWh、8kWh、12kWhと拡大でき、最大で200kmの航続距離を実現するという。HelixxのCEOであるスティーブ・ペッグ氏は、AUTOCARの取材に対し、8個まで搭載できるかどうかを評価中であり、そうすればさらに航続距離が伸びるだろうと述べている。

商用タイプ、乗用タイプともに一般消費者に販売されることはなく、事業者に定額制でリースされる予定だ。Helixxは、1時間あたり0.25ドル(約33円)で利用できるようにすることを目標としている。

Helixxは英オックスフォードに本社を置くが、収益性を確保するため、ファストフードのフランチャイズと同じように、ライセンス・パートナーシップの下で運営される小規模の現地工場を監督する。

「世界のどこに行っても、95%の部品は現地で作ることができます。プレス工場や鋳造工場があれば、何でも作れるんです」とペッグCEOは話す。

駆動用バッテリーのように、製造が難しい一部の部品は、Helixxが調達しなければならない。それでも、現地の資源を可能な限り活用することで、車両コスト(経済的にも環境的にも)の低減を目指す。

ペッグCEOは、「当社はマクドナルドのフランチャイズからヒントを得ました。マクドナルドのフランチャイズは、料理ができなくても経営できる。料理をする必要さえないのです。ただ、決められた工程をこなすだけでいい。サプライチェーンがどこから来ているのか知る必要もありません」と述べている。

アジアの発展途上国向けにサブスク販売

世界各地で一貫した製造品質を確保するため、Helixxはドイツの大手テック企業シーメンスと共同開発中のソフトウェアフレームワークを使用する予定だ。これは、「デジタルツイン」と呼ばれる車両の仮想モデルを使用し、工場内のカメラやセンサーと組み合わせ、各工程が正しく完了したことを確認するものである。

「当社は、英国のミッション・コントロールを通じて、そのすべてをここで行うことができます。工場のネットワークがあり、ある工場でエラーが発生した場合、まるで隣の部屋にいるかのように、その状況を確認することができるのです」

トゥクトゥク版も用意される。
トゥクトゥク版も用意される。    Helixx

つまり、工場のスタッフは、車両の製造方法について広範なトレーニングを受ける必要はなく、「一連のプロセスに従って、赤いサムズダウン(Bad)ボタンや緑のサムズアップ(Good)ボタンをクリックするだけで、プロセスが継続される」のだという。

また、事業者向けにサブスクリプション形式でリースすることで、車両の耐用年数を迎えたあとの廃車やリサイクルの行程も管理できる。

「自動車に限らず、多くの製品で循環型社会、『エンドオブライフ』、『セカンドライフ』について語られています。しかし、その根本的な問題は、誰かに売った時点で、その問題はもう自分のものではなくなってしまうということです。消費者が十分に責任をもってリサイクルしてくれることを期待しているようなものです」

「リサイクル可能なものとリサイクルされたものとでは、大きく異なります。Helixxが完全な循環型社会を実現するために、(車両は)定期購入か、Helixxのプラットフォーム内で所有権を維持することでしか手に入れることができません。そして、車両と素材も過剰な処理薬品を必要とせず、完全な循環性とリサイクル性を持つように設計されています」

車両の耐用年数が尽きると、Helixxはそれを別の車両にアップサイクルするか(例えばピックアップトラックをバンに変える)、あるいはその材料の「100%」リサイクル可能性を利用することを計画している。

Helixxは現在、最初の車両を開発中で、5月までの納車を目標としている。

ペッグCEOは、「わたし達スタートアップ企業にとって、誰かが手に取り、触って感じることができる物理的なものを持つことは本当に重要です。わたしはこれまでスタートアップ企業で十分なキャリアを積んできたので、こうした『大胆』なベンチャーが世間にどう評価されるかを知っています」

Helixxは、英国でパイロット工場の建設も進めており、最終的には世界中の工場の「ミッション・コントロール」のハブとして使用する予定だ。この工場はシンガポールでも再現され、現地に根ざしたサプライチェーンの確立が可能かどうか試される。シンガポールの経済開発委員会と交渉中で、その他にもインドネシアやマレーシア(クアラルンプール)の「主要産業プレーヤー」とも交渉中だという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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