管理職サルーンの象徴 フォード・ゾディアック オースチンA110 ヴォグゾール・クレスタ 後編
公開 : 2023.04.16 07:06
管理職向けにデザインされたフォード、オースチン、ヴォグゾールのサルーン。成功者の象徴だった3台を、英国編集部が振り返ります。
もくじ
ー成功を象徴するサルーンとして一目置かれた
ーバランスに優れたプロポーション
ー思わず帽子をかぶって運転したくなる
ー管理職向けサルーンが不可欠だった英国市場
ーゾディアック MkIII、A110 ウェストミンスター、クレスタ PB 3台のスペック
成功を象徴するサルーンとして一目置かれた
ルート66が似合いそうなアメリカンな見た目こそ、フォード・ゾディアック MkIIIの売りの1つ。当時のAUTOCARは、先代より多くの関心を集めるだろうとまとめている。モータースポーツ誌は、高速道路を160km/hで現実的に巡航できる性能に唸った。
手頃な価格で威信を漂わせるサルーンを選べることに、意味があった。最終的には8万台近い数が英国紳士のもとへ渡っている。
今回、ブルーの1963年式ゾディアック MkIIIを持ち込んでくれたのは、2021年に購入したばかりだというデビッド・キーピング氏。「オーナーズクラブの仲間が、15年ほど前から乗っていたクルマです」
「以前から関心があると彼に伝えていたので、売却すると決めた時、1番に声をかけてもらったんですよ」。と経緯を説明するデビッド。トランスミッションは4速コラムで、オーバードライブは付いていない。
「とても滑らかに運転できます。ドラッグレースで勝つのは難しいですが。当時の競合モデルと同様に、パワーステアリングの装備も可能でした。オリジナルのダイナモは発電が弱いので、オルタネーターへ交換してあります。夜道は暗くて不安ですから」
ゾディアックは、1966年にMkIVへ交代。時代遅れになったテールフィンは削られ、スクエアな見た目になった。それでも、クロームメッキのフロントグリルが強い輝きを放つMkIIIは、成功を象徴するサルーンとして最後まで一目置かれた存在だった。
バランスに優れたプロポーション
対して、同じくテールフィンを備えたオースチンは、今回の3台では最もデザインが古い。オリジナルは、ピニンファリーナによって描かれたA99 ウェストミンスターで、1959年に発表されている。ウーズレーとプリンセスの兄弟モデルと同時に。
A110を名乗り、新しいフロントグリルを得たのは1961年。他の2台と同様に、英国社会では一定の地位にある人へ向けられたサルーンだった。
当時のパンフレットを振り返ると、「威厳のある配色で強く輝く」「際立った人へ向けた際立ったモデル」といった言葉で訴求している。時間を節約したいビジネスマンへ、理想的なモデルだとも。
当時のAUTOCARは、冷静に仕上がりを伝えた。「落ち着いた見た目で、広々とした車内・・・エグゼクティブの移動手段として非常に適しています」
1964年にフェイスリフトを受け、A110 MkIIへ進化。1968年まで生産が続けられたが、その頃にはライバルのゾディアックはMkIVへ、クレスタはPCシリーズへモデルチェンジしていた。
とはいえ、A110 ウェストミンスターが古びて見えるわけではない。バランスに優れたプロポーションのお陰だろう。イタリアで創造されたアメリカンな雰囲気が、好ましい印象を与える。荘厳な雰囲気を漂わせ、弁護士が乗っていても不自然ではない。
今回のグレーのクルマは、マーク・シェプリー氏がオーナー。2011年に1967年式を購入している。グレードはスーパー・デラックスで、A110 ウェストミンスターMkIIの典型的な内容を今に残す。