多くのコンポーネントがM4譲り BMW M2 クーペへ試乗 過去ベストを更新するか 後編

公開 : 2023.04.06 08:26  更新 : 2023.07.06 11:14

極めて高評価だった、先代のF87型M2。最新版はそれを超えることができるのか。英国編集部が一般道で評価しました。

従来的なMでもオールドスクールではない

新しいBMW M2に組まれるアダプティブ・ダンパーは、フロントがBMW M4用で、リアはM3 ツーリングの改良版だという。サスペンションの特性は、M4と比較するとリアアクスル側がソフト。フロント側がハードに設定されている。

これは110mm短いM2のホイールベースを意識したもので、動的なダイナミックさを最大限に引き出そうとした結果。シャープな回頭性を叶えつつ、過度にドリフトしすぎない粘り強いリアアクスル側の特性を求めている。

BMW M2 クーペ(北米仕様)
BMW M2 クーペ(北米仕様)

「多くのお客様に、M4とM2、それぞれのシャシー設定を気に入っていただけるはずです。わたしたちの目標は、完璧なM2のコンセプトのベストを引き出すことでした」。開発で主任技術者を務めた、BMW M社のダーク・ハッカー氏が説明する。

その実現のために、電動パワーステアリングや電子制御のMリミテッドスリップ・デフ、スタビリティ・コントロールへも入念なチューニングが施されている。トラクション・コントロールの設定には、10段階が用意された。

「新しいM2は、従来的なMモデルといえます。でも、オールドスクールなわけではありません」。ハッカーが付け加えた。

果たしてその仕上がりは、出色の出来だった先代のM2からアップデートされたのだろうか。正直なところ、明言は難しいかもしれない。

先代との明確な血縁関係は感じ取れない

最新のM2はしなやかにタイヤが路面へ追従し、コーナリング時の落ち着きが増している。エンジンの広い回転域で56.0kg-mもの最大トルクが放たれ、至って高速でもある。

シャシーバランスは秀逸で、アンダーステアが巧みに抑えられている。若干曖昧なブレーキペダルの感触を除いて、動的特性の仕上がりは成功といっていい。

BMW M2 クーペ(北米仕様)
BMW M2 クーペ(北米仕様)

しかしF87型のM2 コンペティションが備えていた、意欲的な回頭性には迫れていないことは間違いないだろう。若干神経質だったとはいえ、先代は理想的なルートで深い感動を与えてくれた。

新しいM2では、サスペンションが支える軽くない車重を意識させられる。落ち着きを失うことは殆どないとはいえ、メカニズムが必至に質量と戦っている様子が伝わってくる。同時に、10%ほど安定方向に振りすぎている印象も伴う。

アクセルペダルで姿勢やラインを調整するには、相当に攻め込んだ領域へ踏み込む必要がある。幅が285もあるリアタイヤは、M2には少々太すぎるように思う。

今回の世代交代は、初代からの漸進的な進化ではなく、大きな変容だといっていい。F87型と新しいG87型との間に、明確な血縁関係は感じ取れない。新しいM2は、M4の入口側にあるように思える。

トランスミッションも、そんな印象を強めている。デュアルクラッチ式から通常のトルクコンバーター式へ交代し、非常に滑らかな変速を叶えているが、Mモデルとしてはシャープさが弱いのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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