BMW X7 詳細データテスト 走りと快適性との好バランス M由来のV8 真正Mモデル並みの速さ
公開 : 2023.04.08 20:25 更新 : 2023.05.06 07:04
走り ★★★★★★★★☆☆
計測データを見れば、このX7のトップグレードは、単なるM的要素を持ったクルマではなく、正真正銘のMモデルなのではないかと思ってもしかたのないことだ。
満タンにドライバーが乗ると、2750kgを優に超えるが、0−97km/hは4.2秒、161km/hには10.4秒で到達する。この数字は、ほんの1世代前のM5に近い。まるでボンドカーのようなパフォーマンスだ。
中間加速もかなりのもの。キックダウンでの48−113km/hはたったの3.7秒、3速での48−80km/hは2秒ジャストという驚きのスコアで、さらに、5速での129−161km/hは3.9秒だ。
M由来のV8ツインターボは、160km/hに近づいても、かなりの空気抵抗をものともしない力強さを発揮する。もちろん、最近ではハイパフォーマンスSUVが、その巨体を忘れさせるパフォーマンスをみせることに慣れてきているし、客観的な数字はこれまでになかったようなものではない。
おそらく、このX7のスピード感を驚くべきものにしているのは、パフォーマンスそのものが型通りのキャラクターではないことだ。4.4Lのエンジンは、M60i専用のスポーツエキゾーストを備えながらも、トップエンドでの弾けるサウンドは感じられない。
うまくいっているのは、うれしいくらいシャープなスロットルレスポンスだが、これには新型の48Vマイルドハイブリッドシステムが寄与している部分もある。そして、炸裂するトルクがイージーに引き出せるのも理由だ。
この優れたスロットルレスポンスと楽な中間加速に、8気筒の柔和なサウンドが相まって、X7 M60iを心地よいクルマに仕上げている。さらに新型トランスミッションは、ナチュラルで控えめな制御が施され、パドルで特定のギアを選ぶ必要性を感じさせることが滅多にない。
このパワートレインはこの上ないほどなめらかで、ドライバーがその気にならない限りは存在感を示すことがないほどだ。
もしもこれ以上を望むなら、昔からBMWのアキレス腱となっているブレーキの強化だろうか。といっても、性能的に問題があるわけではない。113km/hからの制動に必要な距離は45.2mで、これはポルシェ・カイエン・ターボGTとさほど変わらない。
しかし、重量級モデルにあってほしい、安心感あるカッチリした食いつきはない。また、効き具合に一貫性が薄いので、ペダルでのコントロールがしづらい。ほかを台無しにするようなことではないのだが、この点ではカイエンに大きく後れをとっているのも事実だ。