BMW X7 詳細データテスト 走りと快適性との好バランス M由来のV8 真正Mモデル並みの速さ
公開 : 2023.04.08 20:25 更新 : 2023.05.06 07:04
操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆
重いクルマのハンドリングを軽いクルマのように仕上げるという点で、BMWはこれまで平均以上の仕事をしてみせてきた。それについては、ベストな自動車メーカーと言ってもいいだろう。
M5 CSをドライブすれば、それは誰にでもわかる。スーパーサルーンが、重量を感じさせない元気さと一体感のあるコーナリングを見せるのだから。それはM3コンペティションにも同じことが言える。どちらも大きくて比較的ラグジュアリーなクルマでありながら、チャレンジングな走らせて楽しい道を、じつに生き生きと駆け抜けるのだ。
われわれとしては、X7 M60iのハンドリングが、それらのMモデルと同じレベルだとはいわないが、Mのノウハウを活かし、新型レンジローバーやアウディQ7、メルセデスGLSなどを凌ぐものにはなっている。このクラスのベンチマークであるカイエンさえ危ういのではないかと思わせるほどだ。
となると、このMパフォーマンスのX7がどれくらいよく走るのか、という話になる。物理的な動きに関して言えば、その答えは「ベリーグッド」。しかしながら、リアルな満足感ということになれば、ハイパフォーマンスサルーンには少なからず及ばないところがある。
ほとんどの場合、M60iのシャシーはきっちり整って、安全で自然な走りに徹する。ピッチとロールのみごとな抑えぶりが特徴的に思えることがあり、このコントロール具合が、ステアリングフィールの欠如でコンフィデンスにぽっかり空いた穴を埋めてくれる反面、ドライバーとマシンには距離感が生まれてしまう。
また、大きくて高い位置に積まれたV8がノーズをワイドに引っ張る感覚があるのを否めない。また、これに対してある程度は音スロットルでアジャストできるものの、クルマの質量が大きく、4WDシステムやESCのチューニングがコンサバティブなので、その効果は緩和されてしまう。
そうはいってもコーナリングのバランスは楽しめて、さすがは優れた縦置きエンジンの血統にあると感じさせる一番のポイントとなっている。それでも、一体感を味わえるものにはなっていない。
それでもかなり悪くないように思えるのだが、カイエンの操作に忠実な走りを知ってしまうと、物足りなさを覚えてしまう。X5 Mや、V8のベントレー・ベンテイガと比較しても同じことが言える。