EV戦略ばかり注目されるが…… トヨタ新体制が最も強く伝えたい「モビリティ・カンパニー」への変革
公開 : 2023.04.08 22:50
トヨタは2023年4月1日付で新体制方針説明会をおこないました。今回の目玉は「トヨタモビリティコンセプト」だったのでは?
報道ではEVに話題集中
トヨタは2023年4月1日付で、社長と副社長が新体制へ移行したことに伴い、同年4月7日に報道陣向けに新体制方針説明会をおこなった。
これを受けたこれまでの各種報道では、EV(電気自動車)に係るニュースが目立つ印象がある。
なお、トヨタはEVをバッテリーEV(BEV)と呼ぶが、本稿では一般的な用語としてEVで統一する。
確かに今回、「2026年までにグローバルでEV10車種を投入し、EVの年間販売台数150万台を目指す」と説明したのだから、bzシリーズの多角化やレクサスEVの導入が今後3年間で一気に進むことになる。
また、2026年には、製品企画と設計を大幅に見直し、またトヨタ生産方式を基盤とした新しい製造工程を導入する、次世代EVを量産することも明らかになった。
こうしたEVに関する公表内容から「トヨタがEVでも欧米や中国メーカーを一気に追い上げる体制を敷いた」という解釈をすることも可能ではある。
ただし、トヨタ側は、これまで公表してきたEVに関する基本方針に沿って準備を進めてきた中で、進捗状況をこのタイミングで発表したものという説明だった。
筆者の印象としては、EVや電動化に関する今後の取り組み対しては、「想定内」と見たメディアが多かったと思う。
その上で、今回の目玉は「トヨタモビリティコンセプト」だったのではないだろうか。
モビリティ・カンパニーへの道
新体制になり、佐藤恒治社長は改めて「これから私たちは、モビリティ・カンパニーへの変革を目指していく」と強調した。
そうした将来事業に対する基本方針を明文化したものが、トヨタモビリティコンセプトだ。
コンセプトというと、製品企画における技術やデザインの試作というイメージを持つ人が少ないないかもしれないが、トヨタモビリティコンセプトは、試作ハードウェアを指すのではなく、「将来事業の概要図」という位置付けである。
そこには大きく3つの領域がある。
まずは、「モビリティ1.0」から見ていく。
ここでは、次世代のクルマの利活用方法を融合することで、クルマの価値を拡張を目指す。
事例の1つが、クルマを蓄電池として使う「エネルギーグリッド」だ。
グリッドという考え方は、スマートグリッドといった表現が使われることが多い。一般的には、主に電力を一定の区域や地域で地産地消する仕組みを指す。
トヨタはこれまでも、プラグインハイブリッド車や燃料電池車を使うエネルギーの地産地消を考えてきた。
今後は、多様なEVモデルが市場導入されることによって、エネルギーグリッドに関する様々なビジネスモデルの構築が可能になるだろう。