EV戦略ばかり注目されるが…… トヨタ新体制が最も強く伝えたい「モビリティ・カンパニー」への変革

公開 : 2023.04.08 22:50

知能化をより広い分野で複合的な構築を目指す

EVがエネルギーでつながるだけではなく、モビリティ1.0では対象をEVに限定せず、トヨタ/レクサスの各モデルを活用した知能化の観点でも新しい展開を見込む。

クルマの知能化といえば、通信で情報がつながるコネクテッドカーという考え方がすでに普及している。

トヨタ車は、DCM(データ・コミュニケーション・モジュール)と呼ぶデータ通信機を標準装備し、車載データをクラウドで集積/解析する仕組みを構築している。

ここに、ウーブンバイトヨタが開発した、ソフトウェア基盤「アリーン」を融合することで、クルマから得たデータの多様な利用方法が考えられるだろう。

次に、「モビリティ2.0」だ。

ここでは、トヨタは移動に対して「誰ひとりも取り残さない」という企業としての姿勢を貫く。

具体的には、居住地を問わず高齢者に対して、また中山間地域で過疎が進む交通不便な地域の住民に対して、そして交通インフラが整ってない経済発展途上の国や地域での公共交通システムの構築やパーソナルモビリティの積極的な活用を目指す。

最後に、トヨタモビリティコンセプトの3つ目の領域である、モビリティ3.0では、モビリティ1.0とモビリティ2.0を含めたような、クルマと社会全体が融合する大きな取り組みとなる。

世界が変動する中、トヨタも柔軟に動く

モビリティ3.0は、社会全体で活用するエネルギー、交通システム、物流、そして人々の日々の暮らしという観点も交えた、モビリティが社会と創るエコシステムの構築を目指すとしている。

このようなトヨタモビリティコンセプトで描かれた項目については、これまでもCASE(コネクテッド/自動運転/シェアリングなどの新サービス/電動化)という観点で、自動車メーカー各社が異業種や行政機関と連携して実証試験をおこなったり、また一部では実用化されている場合もある。

トヨタ新社長の佐藤恒治氏。
トヨタ新社長の佐藤恒治氏。    トヨタ

トヨタとしても、自社やトヨタのグループ企業がこれまでに、CASEに係る基礎研究や実証試験で培った知見を活かし、さらにウーブンシティという近未来型実験都市をフル活用することで、トヨタのモビリティ・カンパニーへの変革を「見える化」させていく構えだ。

ただし、自動車産業界を取り巻く状況は刻一刻と変化している状況にある。

欧米と中国によるグローバルでの環境関連投資の争奪戦が激しさを増している。また、欧州では車載データの管理方法について標準化の動きがある。

そうした中で、トヨタモビリティコンセプトをリアルワールドに反映させるためには、トヨタとしてフレキシブルな対応が必須となるだろう。

今後も、トヨタ新体制の動きをじっくりウォッチしていきたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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