目下の究極 ベントレー・コンチネンタルGT W12 マリナーへ試乗 660psへ増強

公開 : 2023.04.20 08:25

嵐のように流れる景色 平然とした車内

超高級な素材を惜しみなく用いた内装と、レーシングカー級の瞬発力の両立は、簡単に叶えられるものではない。コンチネンタルGTが現在の量産モデルで最高の1台であり、W12 マリナーが最高のコンチネンタルGTだということを、証明している。

91.6kg-mもの最大トルクは、1500rpmから5000rpmの回転域で生み出される。有能な8速デュアルクラッチATが、途切れることなくシフトアップを繰り返し、4本のタイヤへ漏れなく伝える。景色は嵐のように流れるが、ドライバーは平然としていられる。

ベントレー・コンチネンタルGT W12 マリナー(英国仕様)
ベントレー・コンチネンタルGT W12 マリナー(英国仕様)

ベントレーは、最高速度を控えめに334km/hだと主張する。とはいえ、広大なテストコースなら350km/hは出るだろう。ティアラのようなフロントグリルで着飾っていても。

W12 スピード譲りのシャシーを得たといっても、ドライビング体験が一変したわけではない。大きなボディに軽くない車重であることに変わりはなく、本当の充足感に浸れるとはいえない。本域の8割位までが気持ちいい。

ステアリングホイールには自然な重み付けがあり、レシオも適正。アクセルペダルを中ほどまで倒した状態で、直感的に操れる。アクセルレスポンスは想像以上にシャープだ。

低速域では、8速ATが変速を悩むような場面もある。だが、速度域が上がるとキビキビと仕事をこなす。ドライブモードを引き上げれば、シフトアップの度に豊かな排気音が放たれる。

現在の究極のコンチネンタルGT

乗り心地も素晴らしい。ベストバランスのベントレー・モードを選ぶと、グレートブリテン島の一般道へ最適化されたかのように、流暢に路面を処理する。アスファルトと息を合わせ、ボディはフラットに保たれる。車重も忘れさせる。

ドライバーがその気になってカーブへ攻め込めば、滑らかなテールスライドも披露する。ストレートに戻れば、何事もなかったかのように姿勢を整え、驚異的なトラクションで突進し始める。

ベントレー・コンチネンタルGT W12 マリナー(英国仕様)
ベントレー・コンチネンタルGT W12 マリナー(英国仕様)

W12 マリナーは、完璧といえるだろうか。プラスティック製のシフトパドルや、アンドロイド・オートへ非対応のインフォテインメント・システムは、英国で25万8000ポンド(約4153万円)という価格には相容れないものかもしれない。

V8エンジンのコンチネンタルGTの方が、遥かに安価なことは事実だ。インテリアは充分高級に仕立てられているし、同等に心地良いドライビング体験を享受できる。

フェラーリ812スーパーファストと同等の価格だということにも、触れておきたい。長距離での快適性では劣るとしても、白眉のV型12気筒エンジンが載っている。

とはいえ、現在の最高が組み合わされた究極のコンチネンタルGTだといっていい。少なくとも、今のところは。

ベントレーの主任技術者、マティアス・ラーベ氏は、限定生産のバカラルに並ぶ740psまで、コンチネンタルGTが増強される可能性をほのめかしている。スーパースポーツ仕様として、不満ないパワーが宿るようだ。

ベントレー・コンチネンタルGT W12 マリナー(英国仕様)のスペック

英国価格:28万2360ポンド(約4546万円/試乗車)
全長:4850mm
全幅:1964mm
全高:1399mm
最高速度:334km/h
0-100km/h加速:3.6秒
燃費:7.3km/L
CO2排出量:311g/km
車両重量:2273kg
パワートレイン:W型12気筒5950ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:660ps/5000-6000rpm
最大トルク:91.6kg-m/1500-5000rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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