離島で生き延びるクラシック フォード・カプリ MGBロードスター フィアット500ほか 前編

公開 : 2023.04.23 07:05

ジブラルタル海峡の遥か西、ポルトガル領マデイラ島で生き延びるクラシックカー。英国編集部が、個性的な数々をご紹介します。

古き良き南欧の空気が残るマデイラ島

アフリカ大陸から650km以上離れた、大西洋に浮かぶポルトガル領のマデイラ島。起伏に富んだ小さな陸地には、古き良き南欧の空気が残る。街を歩けば、懐かしいクラシックカーとも沢山出会える。

ブーゲンビリアやハイビスカスなど、南国らしい花が咲き誇る急斜面を、年代物のクルマがゆっくり登っていく。力を振り絞って。ちなみに面積は741平方kmで、奄美大島と同じくらいだ。

ライレーRMC(1951年)と、ジェラルド・ブレッターバウアー氏
ライレーRMC(1951年)と、ジェラルド・ブレッターバウアー氏

道路の整備が進み、トンネルが掘られ、島の反対側まで速く向かうことも可能になった。だが、うねうねと坂が続く旧道も現役。特に島の南部、フンシャルの山際には世界有数の急勾配がある。場所によっては、斜度は45%にも達するという。

殆ど断崖絶壁のように見える坂道だが、頑張って登る価値はある。壮大な絶景を拝むことができるから。

輸送費が高い離島では、クルマは徹底的に走り込まれ、生涯を終えることが珍しくない。「自分のクルマを家族のように大切にする人が多いですよ」。と話すのは、マデイラ島の観光文化担当長官を務めるエドゥアルド・ジェズス氏だ。

約2000台のクラシックカーが生き抜いており、レストアにも熱心らしい。「費やした金額が、価値に反映するとは限りません。しかし、毎年恒例のレストア・コンテストを通じて、かつての輝きを取り戻したいという動機を所有者へ与えています」

島には複数のオーナーズクラブも存在する。積極的にイベントが開かれているそうだ。

「大西洋の真珠」と呼ばれる美しい島に残る、現役で走り続けるクラシックカーたちを今回はご紹介しよう。

協力:ビジット・マデイラ、ヴィダマール・リゾートホテル、ブリストル空港駐車場

フォード・カプリ 3000GT(1973年)

オーナー:エドゥアルド・ボナル・シルバ氏

旅行代理店を営むエドゥアルドは、休日のドライブが何よりの楽しみだという根っからのマニア。1974年式ミニ・クラブマン 1275GTや、1974年式ダットサン1600 SSS、1972年式マツダRX-2など、合計8台のクラシックカーを所有しているそうだ。

フォード・カプリ 3000GT(1973年)とエドゥアルド・ボナル・シルバ氏
フォード・カプリ 3000GT(1973年)とエドゥアルド・ボナル・シルバ氏

そんな彼の1番のお気に入りが、1973年式フォード・カプリ 3000GT。鮮やかなペッパー・グリーンのボディに、ブラックのビニール・ルーフが決まっている。

ドライなサウンドを響かせるV6エンジンは、多くの視線を集めるという。パワフルで、急な坂も簡単に登り切ると誇らしげだ。「カプリは、ヨーロッパのマスタングと呼ばれていましたからね」

「これは、夫を失った婦人が15年間も眠らせていたクルマでした。彼女から買い取るまで、4年間も説得を続けたんですよ。クラシックカーは自分にとっての生きがい。多くの島の人と同様にね」。とエドゥアルドが笑った。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    リチャード・ウェバー

    Richard Webber

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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