メルセデス・ベンツAクラス 改良でどう変わった? マイナーチェンジ車の注目は足さばき

公開 : 2023.04.12 05:45

ガソリン仕様 見どころは?

最高出力はNA1.5L相応の136ps、1.4t近い車重には少々頼りなくも思える。

ただ、最大トルクはNA 2L相応の20.4kg-mであり、1460~4000rpmという幅広い回転域で発生する。試乗した印象も、トルク特性のよさを実感させるものだった。

改良新型メルセデス・ベンツA180(ローズゴールド)
改良新型メルセデス・ベンツA180(ローズゴールド)    宮澤佳久

全開の高回転域の加速も悪くないが、3000~4000rpmを使った加速が心地いい。強めの加速でも一段落としで3000rpm台を伸びやかに使う。

中庸域の力感にも優れたトルク特性もあって、体感する加速は最高出力のスペックから想像する以上だ。

また、エンジンフィール・排気音も穏やか且つ精度感のあるもので、高回転を使用しても威圧感がないのが加速の心地よさを後押ししている。

ただ、走りの熟成度という点で注目されるのはフットワークである。

ポイントは、沈み込む感覚

A/Bクラスの中でも「Aクラス・ハッチバック」は軽快あるいはスポーティな特性。

ただし、硬いサスチューンで絞めたというより、低い全高や短いリアオーバーハングというパッケージングをそのままにフットワークに投影した感じだ。

改良新型メルセデス・ベンツA180(ローズゴールド)
改良新型メルセデス・ベンツA180(ローズゴールド)    宮澤佳久

挙動のメリハリは利いているが、そこに沈み込みも意識させるようなストローク感が織り込まれている。

現行型登場当時のトーションビーム式リアサスを用いたFFモデルは、リアサスが少々突っ張った印象があったが、MC車は往なしのストロークを感じさせる。

Cクラス以上の“メルセデスFR車にも似た味わい”が加わったとも言える。

インパネ周りのデザインが象徴的だが、流行を追うわけでもなくメルセデス車らしさを優先したクルマ造りへのこだわりを強く感じる。

しかも、クラスやカテゴリーの基本から逸脱しない。

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走りの側面なら、高速域で扱いやすく、同乗者にも安心感を与える収まりのいい挙動と乗り心地。

コンパクトなハッチバック車の基本キャラに相応なスポーティ&カジュアルなテイスト。

Aクラス全モデルのボンネットが、力強いパワードームのデザインに。AMGラインのグリルには、マットクローム仕上げの小さなスリーポインテッドスターを散りばめた。
Aクラス全モデルのボンネットが、力強いパワードームのデザインに。AMGラインのグリルには、マットクローム仕上げの小さなスリーポインテッドスターを散りばめた。    宮澤佳久

前者はクラス内でのメルセデス車らしさ、後者はメルセデス車相対でのAクラスのキャラであり、この2つが矛盾なく融合されている。

さらに走りの質感で言えば、多少Cクラスに近づいた感もある。

前項で述べたように主にリアサスのストローク使いによるものだが、硬柔とは別の車体挙動のちょっとした違いに“Cクラスと共通した味”が増加。

だからといってCクラスと対等になった訳ではないが、プラットフォームやサス形式の差を以前ほど意識しなくなった。

エントリーモデルといってもA180は498万円からの価格設定であり、コンパクトカーとしては値頃とは言い難い。

適応用途から「Bクラス」や「Aクラス・セダン」との比較検討は必須なものの、同カテゴリーでは最も手堅い選択の1つでもあり、価格に見合った価値があるか問われれば、迷わず肯定できる。

「メルセデス車を選べば安心」もMCでランクアップしたようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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