英国初のEVピックアップトラック マクサスT90 EVへ試乗 落ち着かないシャシー
公開 : 2023.04.21 08:25
MGモーターの商用車部門にあたる、マクサス。英国初のBEVピックアップトラックの仕上がりを、英編集部が確かめました。
トラックを悩ませる重い駆動用バッテリー
クルマに関わらず、過去に存在しなかった新製品は高い注目を集める。だが、未開の市場を切り拓く挑戦者には、小さくない課題も降りかかる。マクサスがリリースしたバッテリーEV(BEV)のピックアップトラック、T90 EVも、そんな状況にあるようだ。
現在のBEVにとって、駆動用バッテリーが及ぼす軽くない車重は悩みのタネ。車重が増えるほど、搭載できる荷物の量は減ってしまう。BEVで四輪駆動の場合はツインモーターになることが一般的で、重くなりがちでもある。
英国では、1000kgの積載量を叶えたピックアップトラックは、20%の付加価値税から免れられる。もちろん、軽い方がエネルギー効率も優れる。
堅牢なセパレートシャシー構造の場合は、構造材が2本伸びるラダーフレームの間に、駆動用バッテリーをまとめる必要がある。パッケージング上の制約も大きい。
結果として、T90 EVは後輪駆動のみ。最低地上高は、ディーゼルエンジンで走るピックアップトラックの多くが220mm前後あるのに対し、T90 EVは187mmに留まる。悪路性能にも影響が出てくる。
それでも、リアアクスル側に搭載された駆動用モーターの最高出力は203psある。実用性重視のディーゼルターボと比べれば、パワフルといっていいだろう。
フロントが硬くリアが安定しにくいバランス
重たい駆動用バッテリーが低い位置へ集中するBEVは、重心位置が下がり操縦性に優れることが多い。しかし、すべてのモデルに当てはまるとは限らない。
引き締まった姿勢制御で、T90 EVはしっかり路面を捉えてくれる印象がある。しかしカーブが連続する区間では、フロントが硬めで、リアが安定しにくいというバランスが見えてくる。乗り心地も褒めにくい。
通常ならフロント側に載る重いディーゼルエンジンがなくなり、駆動用モーターもリア側にある影響で、フロントタイヤのグリップ力は限定的。アクセルペダルを踏み込むと重心が後ろへ移動し、更にフロント側が軽くなるようだ。
高速道路の速度域では、空荷状態だとリアクスル側が不安なほど跳ねる。進路も乱され、ステアリングホイールの細かな操作に追われる。そもそも、直進性が良好とはいえない。多くの商用車とは異なり、荷物を搭載すれば安定性が高まるわけでもなさそうだ。
とはいえ、1485x1510mmの荷台には1000kgまでの荷物を積んで走ることができる。英国では、ピックアップトラックとして付加価値税を回避できる。
回生ブレーキは強力に効き、エコとノーマル、パワーというドライブモードも用意されている。最高速度は125km/h、航続距離は354kmがうたわれる。急速充電能力はDCで80kWまで。最短45分で、20%から80%まで駆動用バッテリーを回復できる。