今後に懸念を抱かせるPHEV マツダCX-60(最終) 乗り心地と燃費に疑問 長期テスト 

公開 : 2023.04.23 09:45

上級志向のマツダから初のPHEVとなるCX-60が誕生。歴代モデルで最も高価な大型SUVの実力を、長期テストで確かめます。

積算8432km 優位に運べる内容には届いていない

小さなハッチバック、フォードフィエスタのエントリーグレードが、英国では2万5000ポンド(約402万円)ほど。ボルボの新しいバッテリーEV、XC90は10万ポンド(約1610万円)を超えるとか。英国の自動車価格は、驚くほど上昇している。

マツダの新しいSUV、CX-60に5万ポンド(約805万円)の価格がついていたとしても、今の欧州では驚く人は少ないかもしれない。とはいえ、やはり安い金額ではない。少し前ならメルセデス・ベンツGLCを購入できた価格帯にある。

マツダCX-60 2.5PHEV AWD タクミ(英国仕様)
マツダCX-60 2.5PHEV AWD タクミ(英国仕様)

ドイツの名門だけでなく、レクサスランドローバーといった、プレミアムブランドのSUVと競合することは間違いない。CX-60には、不足ない魅力やバランスが必要といえる。

ところが、正直なところ万全とはいえないだろう。これまで、マツダは優れたクルマ作りで一定の評価を得てきた。自ずとハードルは上がっていた。しかし、競争の激しいプレミアムSUV市場で、優位に運べる内容には届いていないといえる。

逸材揃いといえるBMWの開発チームが、CX-60のようにギクシャクしたSUVを量産車として提供する姿は考えにくい。速度抑止用のスピードバンプや、低速域が多い市街地では、落ち着きのない乗り心地に疑問を感じざるを得ない。パワートレインも同様だろう。

最初は新車ならではの渋さが影響していて、走行距離が伸びれば角が取れるのではないかと考えていた。しかし8000kmを過ぎた今でも、走りが滑らかだとはいいにくい。

優れない乗り心地 伸び悩んだ燃費

車重は1980kgと軽くない。英国仕様の上級トリムグレード、タクミには20インチという大きなアルミホイールが履かされており、タイヤは肉薄。バネ下重量も増えている。高速道路にある橋桁の継ぎ目や舗装のツギハギでも、振動を隠すことはない。

ハードな足回りだからといって、コーナリングで驚くような印象を残すわけでもない。5万ポンド(約805万円)する欧州でのフラッグシップSUVとして、充分な洗練度といえるだろうか。

マツダCX-60 2.5PHEV AWD タクミ(英国仕様)
マツダCX-60 2.5PHEV AWD タクミ(英国仕様)

プラグイン・ハイブリッド(PHEV)でありながら、CX-60は燃費でも伸び悩んだ。電動化技術を選ぶ理由は、走行時のCO2排出量を低減し、ランニングコストを抑えることにある。ところが、筆者が6400kmほど走らせた平均燃費は13.5km/Lに留まっている。

長期テストで費やしたガソリン代は、699ポンド(約11万2000円)。充電にも48ポンド(約8000円)掛かっているから、1マイル(約1.6km)当たり19ペンス(約31円)と、予想より多くの金額を支払うことになった。

PHEVのCX-60は、駆動用バッテリーとモーターだけで約64kmを走れるとうたわれる。その通りなら、ガソリンを燃やさず毎日の通勤をこなせたのだが、実際は遥かに及ばない。気温が温かい好条件の日でも、40kmが良いトコロだ。

職場だけでなく、自宅でも充電できていれば、もっと燃費は伸ばせただろう。とはいえ、マツダが掲げる駆動用バッテリーでの走行可能距離は、甘い数字だといっていい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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