サーキットでも活きるKWサス フォード・フォーカス STトラックパックへ試乗 トルクステアも個性

公開 : 2023.04.23 08:25

専用のKWサスペンションで敏捷性を高めたフォーカス STが登場。トラックという名に相応しい内容だと英国編集部は評価します。

KWの車高調コイルオーバーユニット獲得

フォードは、トラック(サーキット)パックの投入で、フォーカス STを更に磨き込んだ。現行の4代目フォーカスとしては、最もエキサイティングな走りを堪能できる足腰に仕上がっているようだ。

2021年にAUTOCARが特別なフォーカス ST、「STエディション」へ試乗した際、その名前以上の改良が施されていたことへ触れている。今回試乗したのは新しい特別版、STトラックパックだが、内容に見合った名称だといえるだろう。

フォード・フォーカス STトラックパック(英国仕様)
フォード・フォーカス STトラックパック(英国仕様)

われわれが一般道で熱くなれる、前輪駆動のホットハッチに相応しい能力を宿している。英国での定番モデルとして。

ホンダシビック・タイプRのように甚大な最高出力は発揮しないし、派手なエアロキットで武装しているわけでもない。それでも乗り心地は適度に引き締まり、ステアリングの反応はクイックで、カーブできっかけを与えればリアタイヤを自在に振り回せる。

トラックパックに装備されるのは、特別なコンパウンドで成形されたピレリPゼロ・コルサ・タイヤと、従来品より10%軽いフローフォーミング技術を用いた19インチ・アルミホイール。その内側には、直径が363mmもあるフロント・ブレーキディスクが光る。

だが、最大のポイントといえるのがサスペンション。ドイツの名門、KW社製の車高調整式コイルオーバーユニットが奢られている。試乗車の場合、車高は10mm落ちていたが、更に15mm下げられる。減衰力は圧縮側で12段階、伸長側で16段階に調整可能だ。

280psの4発ターボにMT、ブレンボ・ブレーキ

ただし、車高や減衰力を変えるには少々手間がかかる。クルマをジャッキアップし、タイヤを外して作業する必要がある。ダッシュボード上のボタンを押すだけ、といった機能はない。

それでも、筆者がSTトラックパックのオーナーになったら、週末の度にタイヤを外し、サスペンションの調整を楽しむはず。どんな変化を体験できるのか好奇心が湧くが、今日は広報用車両だ。フォードが推奨する標準セッティングのままにしておいた。

フォード・フォーカス STトラックパック(英国仕様)
フォード・フォーカス STトラックパック(英国仕様)

それ以外のメカニズムは、従来のフォーカス STと変更はない。が、否定的には読まないでほしい。2.3L 4気筒ターボガソリンエンジンは、280psと42.7kg-mを発揮する。トランスミッションは、6速マニュアル。まったく問題ない。

ステーションワゴンのフォーカス STではATも選択できるが、STトラックパックはMTのみの設定。この内容で、英国価格は3万9950ポンド(約643万円)から。通常のフォーカス STと比較すると、3000ポンド(約48万円)増しとなる。

もちろん、視覚的な差別化もおろそかではない。ルーフスポイラーにリアディフューザー、フロントバンパーのトリム、フロントグリル、ルーフ、ドアミラー・カバーがグロスブラックで仕上げられている。

先述の19インチ・ホイールもグロスブラック。その内側では、レッドに塗られたブレンボ社製のブレーキキャリパーが鋭く輝く。レッドに塗られたSTのロゴも、縁がブラックの専用品だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事