サーキットでも活きるKWサス フォード・フォーカス STトラックパックへ試乗 トルクステアも個性
公開 : 2023.04.23 08:25
シャシーが積極的にカーブへ飛び込んでいく
筆者が4代目フォーカスのSTへ試乗してから、しばらく間が空いていた。STエディションへの試乗機会はなかった。それでもSTトラックパックは、過去にないほど引き締められた足回りを得つつ、充分普段使いできる柔軟性も兼ね備えていることは明らか。
フォードの技術者は、高価なダンパーを採用することのメリットを説明する。これに組まれているアイテムは、市場では2300ポンド(約37万円)相当なのだという。
同時に、路面の隆起部分など強い入力はなだめつつ、洗練された姿勢制御や身のこなしを実現する、絶妙なブレンドを生み出す必要もある。ホットハッチを理解するフォードの仕事も素晴らしい。
試乗車のデフォルト設定は、サーキットでも見事に機能した。ライバルより遥かに機敏で、外側へ流れるアンダーステアを抑え込み、常にアクセルペダルの加減でラインを調整していける。
シャシーが積極的にコーナーへ飛び込んでいくような感覚すらある。ステアリングホイールには不満のない手応えがあるが、少し反応は過剰かもしれない。
高性能なフォードは、かつてここまで飛び抜けた能力を備えていなかった。それでも、シビック・タイプRの方が優れていることも確かではある。
非の打ち所がないパワートレイン
パワートレインは非の打ち所がない。330psを発揮する白眉のシビック・タイプRと比べれば、レッドライン間際のエネルギッシュさで劣るとはいえ、一般道で楽しむ前輪駆動のホットハッチとして、これ以上は必要ないと思えるほど速い。
最大トルクは42.7kg-mで、シビック・タイプRと並ぶ。サウンドはより特徴的で、シフトレバーの感触は滑らかだ。
トラクションもいうことなし。ボルグワーナー社製の電子制御リミテッドスリップ・デフが組まれている。機械式で、僅かなトルクステアが感取されるものの、気にするほどではない。
むしろ楽しい。筆者は、パワフルなホットハッチらしい個性だと思える。トラックパックという名に、そぐわない内容へ仕上がっている。
フォード・フォーカス STトラックパック(英国仕様)のスペック
英国価格:3万9950ポンド(約643万円)
全長:4378mm
全幅:1825mm
全高:1454mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:5.7秒
燃費:12.4km/L
CO2排出量:185g/km
車両重量:1432kg
パワートレイン:直列4気筒2261ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:280ps/5500rpm
最大トルク:42.7kg-m/3000-4000rpm
ギアボックス:6速マニュアル