失うのが心底惜しい アウディTT RS アイコニック・エディションへ試乗 100台限定の記念仕様

公開 : 2023.04.24 08:25  更新 : 2023.06.09 08:18

個性的なビートを打つ5気筒エンジン

ドライビングポジションは低く、不自然なオフセットもない。シートは身体にフィットし、子供なら座れるであろう小さなリアシートと、大きなリアハッチが付いた荷室を備える。実用性も犠牲になっていない。

スクエアなフロントガラス越しの視界は良好で、インテリアデザインは美しい。インフォテインメント・システム用にロータリーダイヤルが備わり、エアコンの操作パネルには実際に押せるハードボタンが並ぶ。送風口のデザインも美しい。

アウディTT RS アイコニック・エディション(英国仕様)
アウディTT RS アイコニック・エディション(英国仕様)

エンジンは見事だ。筆者は5気筒ユニットのファンだといっていい。機械的には、さほどメリットはないだろう。V6ほど小さくないし、直6ほど滑らかでもない。でも、個性的なビートを打つサウンドが心を奪う。

トランスミッションは、キレの良い7速デュアルクラッチ・オートマティック。クワトロと呼ばれる四輪駆動で、400psの最高出力を確実に受け止める。素晴らしい組み合わせだと思う。

日常的にスポーティな走りを求めるドライバーにとって、TTは魅力的な選択肢だ。TT RSの場合、乗り心地は少々硬すぎるといえるが、ボディロールは最小限で、ステアリングは正確で機敏。重ね重ね、失うことが惜しい。

予定されるバッテリーEVのTTに期待

今日は海風が強い。海岸線に立ち並ぶ街路樹がしなっている。ロードレースの想定コースに沿って内陸部へ進むと、道幅が狭くなりカーブが多くなった。人家の間を縫うような区間も多い。このコース設定に、実施上の課題があるようだ。

当初、2021年に初開催の予定だったロードレースは、諸事情で延期。2022年も、書類に不備があったという理由で地方議会が延期を決めた。2023年も難しいだろう。主催者側に確認したが、開催に向けて活動中、というコメントに留まった。

アウディTT RS アイコニック・エディション(英国仕様)
アウディTT RS アイコニック・エディション(英国仕様)

ワイト島の住民の意見も別れているらしい。ルート沿いのガソリンスタンドのスタッフは、開催に賛成している。だが、ある村の住人が強く反対しているらしい。数100万ポンド(数10億円)という、経済効果が見込めても。

ワイト島の東では、サンダウン・スプリントと呼ばれるモータースポーツ・イベントが開かれている。海岸線に沿った公道を区切った短いルートで、多くのマシンがスピードトライアルに挑むという。筆者は観戦したことはないが、かなり面白そうだ。

ワイト島で、自転車のロードレースが数年以内に開かれる確率は高くないだろう。だが、アウディがバッテリーEVのTTを発売する可能性は高いようだ。

真新しいスポーツカーで、再びこの島を訪れたいと思う。歴史ある離島のモータースポーツ・イベントへ、エキサイティングなアウディで駆けつけるなんて、素敵でしかない。

アウディTT RS アイコニック・エディション(欧州仕様)のスペック

英国価格:8万7650ポンド(約1411万円)
全長:4180mm
全幅:1830mm
全高:1380mm
最高速度:280km/h
0-100km/h加速:3.7秒
燃費:11.0km/L
CO2排出量:207g/km
車両重量:1450kg
パワートレイン:直列5気筒2480ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:400ps/5850-7000rpm
最大トルク:48.8kg-m/2250-5850rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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