ハンドルから「手を離す」ってどんな感じ? 欧州初のハンズフリー運転支援を試してみた
公開 : 2023.04.18 06:05
実際どのように走れるのか 高速道路で試す
手を離し、目を離さない。理屈は簡単だが、初めて試すとかなり不安だ。道路を行き交う人たちから不審な視線を浴び、数週間後にはYouTubeで「ひどい英国人ドライバー」として晒されるのではないかと半信半疑だったが、案ずるより産むがやすし。意外にもイージーだった。
ブルークルーズは、基本的にアダプティブ・クルーズ・コントロールの強化版であり、その仕組みは非常に似ている。しかし、車内カメラが常に視線の動きを追跡しているため、運転という行為から完全に離れることはできず、この技術がどれほど人生を変えるものなのかを判断するのは難しい。本を読んだり、メールを見たりできるわけではない。
とはいえ、システムの有効性とインテリジェンスを実証するのに時間はかからず、車両がコントロールしているという安心感から、すぐに肩の力を抜くことができた。英国の法律では、運転席に座っている人間が車両の行動に責任を持つことになっており、保険会社も事故が起きた場合には同じ見解を示すことになっている。
数秒間目を離すと、すぐに「道路を注視するように」とアドバイスされ、注意散漫が続いたり道路状況が不規則だと判断されると、ドライバーにコントロールが戻される。高速道路では、法定速度内で問題なく作動するようだが、標準のアダプティブ・クルーズ・コントロールと同様に、運転状況によって「人間的」なタッチが要求されていると感じたら、ハンドルに手を戻すのが自然な感覚だろう。
直感的に使用できるよう設計されたと言われており、実際に数秒でマスターすることができる。しかし、最終的にハンズフリーのメリットと安全性を納得させる必要があるのは、乗っているオーナーではなく、100km/hで移動している2.5トンの金属の塊と道路を共有することに不安を感じる他のドライバーかもしれない。
ブルークルーズは米国で使用を認められてから2年が経つ。これまでに20万台のマッハE、F-150ライトニング、リンカーン・アビエーターに展開され、ハンズフリーで約1億1000万kmを走行したが、フォードが記録した事故はゼロである。
フォードのADASチーフエンジニアであるトルステン・ヴェイ氏はAUTOCARに対し、「安全性に配慮して設計している」ため、ブルークルーズ搭載車と道路を共有することについて「疑う余地はない」と述べた。
前述の通り、ブルークルーズは「ブルーゾーン」(高速道路や自動車専用道路など、歩行者に遭遇する危険性が極めて低い場所)での使用に限定されている。英国では、交通量の多いM40やM25などの主要道路が対象となるが、フォードは現在もそのネットワークを拡大中だ。
フォードUKのマネージングディレクターであるリサ・ブランキン氏は、ブルークルーズの導入後に「非常に多くの関心と熱意」を集めたとし、大衆車にゲームチェンジャー的な技術をもたらした最新の例であると述べた。フォードは、レベル4の高度な自動運転計画を縮小し、今後はレベル2+の世界展開を優先している。最終的には市場環境が許す限りレベル3の基準まで引き上げる予定だ。
英国向けのブルークルーズは、マスタング・マッハE以外のモデルにも導入される計画だが、具体的な対象車両などはまだ明らかになっていない。