ボルボV40 T5 R-デザイン
公開 : 2014.09.27 23:50 更新 : 2017.05.29 19:08
■どんなクルマ?
英国のマーケティング部門の言うところの ”折衷的でユニークなシャシーをもつクルマ” なるのが、今回テストするボルボV40 T5。折衷という言葉を辞書で引いてみると、二つ以上の考え方や事物からそれぞれのよいところをとって一つに合わせること、と出てきた。ならばこの表現は、このクルマにぴったり。ユニークさもなかなかのものだ。
今回借り出したのはV40ハッチバックの中でも最も力量あるグレード。同社の完全なる新設計である245psのガソリン・ターボが鼻先に載る。
’T5’ とくれば、5気筒エンジンを想像しなくもないが、こちらのエンジンは燃費性能優れる4気筒。8速オートマティックのみの組み合わせとなる。
その上 ’R-デザイン’ と聞けば、終始猛々しい振るまいを見せるのではないかと一瞬身構えたけれど、この場合 ’エグゼクティブ・エクスプレス’ とも表現すべきか、つまるところ速く装備が豊富なクルマを意味するようだ。ボルボの場合においては。
車両価格は£31,715(563万円)。同じくらいの価格帯のプレミアム・ハッチを挙げると、300psのアウディS3スポーツバック・クアトロが£31,265(555万円)、211psのメルセデス・ベンツA250 AMG 4マティックが£30,910(548万円)。馬力こそ、メルセデスはボルボよりも控え目だけれど、どれも軒並みT5よりスポーティな印象。さらにもっともっとスポーティなBMW M135iでさえ£31,375(557万円)と言うのだから、ボルボはちょいと高すぎやしないかとさえ思えてくる。
ただし、スポーティネスを全面に押し出すことはボルボの望むところではない。そういった意味で、’ユニーク’ という言葉がしっくりくるのだ。T5はあくまで、涼しげに加速してゆくクルマを欲するカスタマーを念頭に置いている。これ見よがしな ’贅沢ハッチ’ は欲しいのなら、他へどうぞといった具合に。
とは言っても、0-100km/hタイムは6.3秒。最高速度は240km/hと、求められる最低限のラインどころか、それなりのラインはクリアしている。TFT液晶パネルやレザー・トリム、R-デザイン・ダウンサス、17インチ・アロイ・ホイール、衛星ナビゲーション、コーナリング・ライトなどが標準装備。価格帯に対して豊富と考えるか否か。正直に言うと筆者は ’否’ の方である。
■どんな感じ?
アクセルを敢えて力強く踏み込めば、とたんにノーズは酩酊し始めるうえに、トルクステアも発生しやすい。こればかりはFFだと感じさせられる瞬間だ。4WDならばもう少し落ち着いた挙動をするので、これを嫌う向きは、やや高価ではあるが255psのT5クロスカントリーを購入することを勧める。
また5気筒の方が(燃費は劣るが)音や回転フィールに味があるのに対し、4気筒は穏やかにアクセルを踏む限りは静かな仕事に徹する。245psという出力以外は極めて穏やかなのだ。