現実味を帯びてきた「遠隔運転」 英で法整備進む 事故時の責任は

公開 : 2023.04.20 06:05

事故時は誰が責任を負うのか

――事故が起きた場合、誰が責任を負うのか?

法律委員会は、過失があった場合、オペレーターは従来のドライバーと同じ罪で起訴されるべきであると勧告している。しかし、「接続の問題や遠隔操作機器の不具合」など、オペレーターの管理の及ばない問題については、責任を負うべきではない。そのような場合、制裁を受けるべきは会社であり、起訴される可能性もある。大まかにはVay社も同意見で、広報担当者はAUTOCARに対し「責任の所在は、個々のケースに大きく左右されます」と語っている。

――「遠隔」とはどこまでが遠隔なのか? 国外からも操作可能か?

英国の法律委員会は、この点について明確に述べている。国外の司法権では強制力がないことを懸念し、「国外から車両を遠隔操作することは禁止すべき」としている。例えば、事故が起きたときに遠隔運転していたドライバーの呼気検査(酒気帯びなどの検査)を、国外では迅速に行うことができない。

英フェッチ社が運用する遠隔運転車両
英フェッチ社が運用する遠隔運転車両

インペリウム・ドライブ社のカヴェ氏もこの考え方に理解を示しているが、長期的には、個人ではなく雇い主の会社に責任を負わせる制度が導入されれば、「オペレーターを国外に置けない理由はない」と考えている。

――遠隔運転はセキュリティ上のリスクが高いのでは?

運営会社によれば、そうではないようだ。Vay社の広報担当者はこう説明する。「当社は(ドイツの認証機関である)テュフズードから、自動車産業におけるサイバーセキュリティの新基準であるISO/SAE 21434の評価を受けており、肯定的なお墨付きをもらっています」

「例えば、Vayのデータは、すべての伝送ポイントで暗号化されます。遠隔運転ステーションには、許可されたオペレーターしかアクセスできず、アクセスは技術的手段によって保護されています」

――普及の可能性は?

新しいタイプの交通手段として、普及を疑問視する声がある一方で、遠隔運転車の費用対効果と利便性を求めて自家用車を手放す人もいるかもしれない、という考えもあるようだ。フェッチは、今年中に運用車両を5台から50台程度に増やす意向だ。

果たして実現可能かどうかはまだわからないが、法律委員会の勧告は業界にとって正しい方向への一歩と解釈されており、長期的にはさまざまな法律や規制を基に、道路を走る遠隔運転車が増えていくことになるかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グラハム・ヒープス

    Graham Heeps

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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