「新旧」入り交じる混戦模様 注目は?

もちろん、欧州の老舗企業はブランドを構築する必要はない。課題は、EVへの移行期にも顧客にアピールできるようにすることだ。

フォルクスワーゲンは今回のショーで、中国市場のトレンドにぴったりなEVセダン「ID.7」を、IDの全シリーズと共に披露した。また、その向かい側では、ジェッタ(Jetta)の大きな展示があった。ジェッタは中国限定の低価格ブランドで、かつてのセダンに対する中国人顧客の愛情を反映して名付けられた。

VWは新ブランドに中国で熱く支持されてきたセダン「ジェッタ」の名を与えた。
VWは新ブランドに中国で熱く支持されてきたセダン「ジェッタ」の名を与えた。    AUTOCAR

BMWは、人目を引く「i Vision Dee」コンセプトを展示しているが、同社のブースで最も新しいのはM部門の2台のマシン、「i7 M60」と「XMレーベル・レッド」であった。どちらも賛否両論あり、英国人記者の目には、アンディ・ウォーホル氏のアートカーである美しい「M1」の近くに、巨大なi7が置かれていることが不利に映るようだ。しかし、BMWは自社のマーケットを理解している。中国のインフルエンサーのカメラは皆同じ方向を向いている。

BMWグループからはミニのコンセプトモデル「エースマン」が登場し、クラシックなハッチバック(電動化されているとはいえ)を手元に置いてブランドの伝統を強化している。日産トヨタは、中国限定のEVコンセプトを発表している。いずれも、1つの市場に限定するにはあまりにもったいないものだ。

創立75周年を迎えたロータスのブースは、モーターショーにおける過去最大の規模を誇っている。EVハイパーカーの「エヴァイヤ」と電動SUV「エレトレ」を見守るように、1980年代のF1マシンとその歴史を紹介するディスプレイがあり、まさに新旧が融合した展示内容となっている。

中国の消費者は必ずしもロータスを知っているわけではない。ロータスの目標は、彼らを啓蒙することだ。ロータスはジーリー傘下で若返り、過去からの脱却を図っているが、その中核には長年培ってきた価値観を保持しようと、強く意識している。

そのほかにも、中国の主要メーカーが勢揃いし、主力製品だけでなく、急成長するEV市場のさまざまな側面に焦点を当てたサブブランドも増加している。BYDのブースでは、その規模を如実に示しており、その規模を英国に持ち込めばメジャープレーヤーとなり得る。しかし、BYDで最も際立っていたのは、最小のモデル「シーガル」である。今の欧州にもっと必要な、低価格の乗用EVである。

そして、あまり知られていないブランドからの印象的な展示もあった。Xpeng(シャオペン)、HiPhi(ハイファイ)、Arcfox(アークフォックス)、Aion(アイオン)などなど。何時間でも見ていられそうだが、すべてをリストアップするだけで日が暮れてしまうだろう。注目すべきは、中国国外での成功が確実視される中国製マシンがいかに多いかということだ。上海モーターショーで印象的だったのは、その規模だけではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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