ポールスター2 詳細データテスト 過剰ではないハイパフォーマンスEV 運動性も快適性も高い足回り
公開 : 2023.04.22 20:25 更新 : 2023.05.06 08:27
走り ★★★★★★★☆☆☆
これが加速性能で最速のEVではないことをおわかりいただくのに、長々と説明する必要はない。なにしろ、これはそのつもりで造られたクルマではないのだから。われわれが計測した競合モデルの0−97km/h加速タイムは、BMW i4 M50も、ジェネシスGV60スポーツ・プラスも、フォード・マスタング・マッハE GTも、このポールスターより速かった。
とはいえ、それでもポールスター2 BSTエディション270が遅いと感じることはまったくない。スロットルペダルの調整には、おなじみの円熟味や連続性があり、シャープなレスポンスとイージーで直観的なドライバビリティのバランスもみごとだ。
ローンチコントロールモードもあり、クルマを静止させたままモーターのパワーを少し上げようとすると、ほぼ偶然にそれが立ち上がる。しかし、それを使おうと使うまいと、発進のしかたにはほとんど差がない。
ほぼドライなコンディションでは、完全オフにはできないスタビリティコントロールとトラクションコントロールを弱めに調整しても、前後どちらもホイールスピンの兆候すら出ない。強まったボディコントロールは、気付くほどのスクウォットが出るのを防ぐ。
だから、発進から力強い直線加速まで、ほんのちょっとのスパイスも感じられない。あまりにもスムースで、暴力的な感覚を鎮めている。ドラマティックさも、エキサイティングさも、ほどほどにすぎない。
しかし、速度が上がっても、ライバルのいくつかよりハードな加速をキープする。80−161km/hは5.3秒で、ポルシェ・タイカンRWDパフォーマンスパックの5.8秒を凌ぐのだ。
ポールスターは、速いEVを送り出す多くのメーカーが、ドライバーに一体感をもたらすような方法を避けた。回生ブレーキを調整するパドルがないので、コーナーが近づいたときにエンジンブレーキのような減速を意図的に使うことができない。また、切り替え式の合成エンジン音も用意しなかった。
だから、パワーソースに関わろうという欲求をかき立てる要素はなにもない。ただそこにはシームレスなパワーデリバリーがあるだけで、爆発的なスタートダッシュをすることも、特別なクライマックスを用意することもない。
BSTエディション270は、右足の踏み込み具合に対してひたすらリニアに加速する。ブレーキは、EVにありがちなファジー感こそあるものの、制動力は十分すぎるほどだ。現実的な実力のあるパフォーマーだ。おもしろみには欠けるが。