ランボルギーニのV12エンジンを振り返る 350GTからミウラ、アヴェンタドールへ 後編
公開 : 2023.04.30 08:26
ミラノの研究施設までLM002で飛ばした
エンジンの進化のたびに、バルビエリは試験を重ねた。「燃料インジェクションの開発初期の段階で、ドイツのクーゲルフィッシャー・システムを採用することになり、ウェーバーの工場で排気ガス試験は実施できなくなりました」
「ミラノの研究施設を利用することになり、毎日そこまでランボルギーニで通っていました。LM002がお気に入りで、150km/h、いや、160km/hくらいで飛ばしてね」
「燃料インジェクション化は、1987年にランボルギーニを買収したクライスラーが強く後押ししたものでした。北米の規制を満たすために。最終的にはボッシュのKジェトロニック機械システムに落ち着き、1990年には独自設計のシステムへ更新しています」
1999年、フォルクスワーゲン・グループのアウディがランボルギーニを買収。その頃には、V12エンジンは5.7Lと6.0Lへ排気量が拡大されていた。さらに2001年のムルシエラゴでは6.2Lと6.5Lへ成長。四輪駆動のスーパーカーへ、不満ない動力性能を与えた。
「新エンジンの開発着手までに、12年から14年のブランクが空くことが一般的です」。と現職のマウリツィオ・レッジャーニ氏が話す。ビッツァリーニ由来のV12エンジンは、アップデートを迫られる。
クアトロバルボーレ・ユニットは、既に寿命を過ぎていた。アヴェンタドールの2011年発売へ向けた新V12エンジンの開発は、2008年にスタートした。
高回転域でのパワーが重視される新ユニット
レッジャーニが続ける。「仕様を変更せずに、すべての国の規制に合致できています。小さな会社にとって、異なる仕様のエンジンを製造することは難しい条件になります」
従来のエンジンとの関連性もゼロではない。「技術的に、60度のバンク角はV12エンジンにとってベスト。クランクシャフトとエンジン底部との距離を縮め、鋳造量を減らし軽量化しています。点火順序も変更して、サウンドもチューニングしました」
そんな新ユニットも、終焉を迎えようとしている。ハイブリッド・システムが組まれるV型12気筒エンジンは、まったくの新設計だという。高回転域でのパワーが重視されているとか。低回転域は、駆動用モーターが補うためだ。
1番好きなランボルギーニのV12はどれか、レッジャーニへ尋ねる。「次のユニットです」。と、お手本のような答えが帰ってきた。だが、1998年のディアブロ GTも素晴らしかったと回想する。
ランボルギーニ初の燃料インジェクションで、シリンダー毎にスロットルボディを備えたユニットだ。「キャブレターのような質感で、洗練されていて、遺産のようなユニットでしたね」。少し寂しそうな表情を浮かべたように見えた。
寄稿:John Simister(ジョン・シミスター)