ステランティス 「eフューエル」使用でCO2削減、課題は 28種類の既存エンジンに適合
公開 : 2023.04.25 06:25
ステランティスは、持続可能な燃料とされる「eフューエル」を既存エンジンに使用し、適合性をテストしたと発表しました。今後は排出ガス、エンジン出力、信頼性などについてテストを行う予定です。
合成燃料、既存エンジンに適合
ステランティスは、CO2排出量を90%削減できるとされる合成燃料「eフューエル」について、28種類のエンジンへの適合性テストを完了したと発表した。引き続き既存エンジンでのテストを進めていく。
eフューエルは、炭素とグリーン水素(再生可能エネルギーから作られる水素)を使用して製造される合成燃料だ。
製造時に使用するCO2を大気中から直接回収したり、バイオマスを使用したりすることで、燃焼時に排出されるCO2と相殺し、カーボンニュートラル(あるいは、ほぼカーボンニュートラル)を実現するとされている。
合成燃料は従来の化石燃料と化学的に同一であるため、理論的にはそのまま既存のエンジンに使用することができる。
ステランティスは、2014年から2019年にかけて生産された未改造の従来型ガソリンエンジンとディーゼルエンジンでeフューエルを用い、排出ガス、エンジン出力、信頼性、タンク、フィルター、ラインへの影響などについてテストを行っている。
ステランティス製の車両にeフューエルを使用することで、2025年から2050年の間に欧州で排出されるCO2を4億トン削減できる可能性があるという。
参考までに、英国政府の暫定発表値によると、英国は2022年だけで3億3100万トンのCO2を排出している。
ステランティスは、2030年までにCO2排出量を半減させ、2038年までに実質ゼロ(ネットゼロ)の達成を目標としている。
欧州連合(EU)は先日、持続可能なカーボンニュートラル燃料のみを使用する限り、2035年以降もエンジン車の販売を認めると発表した。これを受け、ステランティスは他社に先駆けて合成燃料への大規模な投資を示した。
フォルクスワーゲン・グループ傘下のポルシェは、以前からeフューエルの研究開発を進めてきた。昨年末には、一部のレースと顧客向けエクスペリエンスセンターで使用するために、パートナー企業のHIF社とともにチリでeフューエルの生産を開始した。
2030年にガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止する英国でも、持続可能な燃料の使用について見直しを求める声が上がっている。英国の運輸特別委員会は政府に対し、持続可能な燃料を無視する政策について「現実を確認する必要がある」と指摘する。
2023年3月に発表した「Fuelling the Future : Motive Power and Connectivity」と題する報告書では、次のように書かれている。
「誰もが現在のクルマをEVに置き換える余裕があるわけではなく、また、誰もが自宅で簡単にEVを充電できるわけでもない」
「必要なバッテリーを製造するためのインフラや原材料の使用量にも疑問がある。バッテリーEVだけに焦点を当てることは、英国の気候変動目標を達成できないリスクがある」
「従来のエンジンに低炭素の選択肢を提供する持続可能な燃料の大きな可能性を、さらに追求する必要がある。ドロップイン式の持続可能燃料の使用量を増やすことで、今すぐ温室効果ガスの排出量を削減すれば、既存の車両とインフラの使用によりコストと炭素排出量を最小限に抑えることができる」
しかし、すべてのメーカーが合成燃料がゴールだと確信しているわけではない。ベントレーのCEOであるエイドリアン・ホールマーク氏は、最近AUTOCARの取材に対し、合成燃料は「とてもエキサイティング」だが、大量生産のための「産業ロードマップは存在しない」と語っている。「永続性はあります。しかし、何か他のものの必要性を代替する銀の弾丸(特効薬)ではありません」