60kWhのリン酸鉄リチウム搭載 BYDドルフィンへ試乗 特別さはないが不満もない

公開 : 2023.05.06 08:25

中国のBYDが手頃な価格の電動ハッチバックを英国へ投入。ブランド力が必要とするものの、仕上がりに不満はないようです。

アット2改めドルフィン コンパクトなBEV

BYDによれば、このクルマはアット2と命名予定だったそうだ。全長4290mmのハッチバックは、英国でも販売が始まったファミリー・クロスオーバーアット3より、ひと回り小さいためだ。不思議ではない理由だと思う。

しかし、「楽しくて面白い」ブランドであるべきだという上級幹部でのミーティングを受け、ドルフィンに改められたらしい。アット3の次にドルフィン。ある程度自動車へ詳しいユーザーの場合、少し違和感を抱くかもしれない。

BYDドルフィン(中国仕様)
BYDドルフィン(中国仕様)

もっとも、フォードフィエスタと兄弟関係にあるプーマも、冷静に考えれば変わった名前といえる。フォルクスワーゲンのゴルフも、聞き慣れた存在とはいえ、メキシコ湾流のガルフ(ゴルフ)・ストリームが由来だという。

若いユーザーなら、すんなり馴染めるのかもしれない。先日ご紹介したサルーンのシールと併せて、徐々に馴染みのあるモデル名になっていくのだろう。アット2は、確かに退屈に思える。

名前はともかく、この中国製のバッテリーEVは、客観的にはまったく不足ない水準に達している。サイズ的には、プジョーe-208よりやや長く、日産リーフより短い。

60kWhのリン酸鉄リチウムで426km

スタイリングも、アット3とは大きく異る。かといって、まとまりは良い。BYDによるe-プラットフォーム3.0が基礎骨格をなし、フロア部分にリン酸鉄リチウムイオン・バッテリーが搭載されている。容量は60kWhある。

リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは、コバルト不使用であることと、従来のバッテリーのような円柱や直方体のセルでは構成されていないことが特徴。長い帯状のセルが並べられている。

BYDドルフィン(中国仕様)
BYDドルフィン(中国仕様)

駆動用モーターの最高出力は203psで、フロントタイヤを駆動する。航続距離は426kmがうたわれ、英国市場では2023年の夏から販売される計画。追って、航続距離300km前後の廉価版も投入される見込み。

高速道路の速度域までなら、ドルフィンは勢いよく加速する。今回の試乗は欧州仕様へ調整が仕上がる前の車両で、テストコースに限られたが、ボディロールが大きかったものの傾きは漸進的といえた。

乗り心地は、テストコース内ということで充分には確かめられなかった。少なくとも、17インチホイールを履いたドルフィンの場合、サスペンションはかなり柔らかく感じられた。このままだと、英国の荒れた路面ではフワフワと落ち着かないかもしれない。

タイヤは中国製のリンロンを履いていたが、英国仕様ではブリヂストン製へ置き換わる可能性がある。改めて、正式な仕様で確かめたいところだ。

低速での走行中には、歩行者へ接近を知らせる電子的なハミング・ノイズが発せられる。ドライバーの好みで、ベルが鳴るような音色も選べる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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