60kWhのリン酸鉄リチウム搭載 BYDドルフィンへ試乗 特別さはないが不満もない

公開 : 2023.05.06 08:25

特別な印象はなくても不満もない

操縦性は、コンパクト・ハッチバックとして妥当。特別な印象はないが、目立った不満もない。ステアリングホイールの重み付けとアクセルペダルへの反応が変化する、ドライブモードが備わる。スポーツとノーマル、エコの3種類から選べる。

ノーマル・モード時はステアリングホイールが非常に軽く、反応は曖昧。スポーツ・モードを選択すると、フロントタイヤからの感触が増え、運転する自信へつながる。ただし、手応えは少々人工的でもある。

BYDドルフィン(中国仕様)
BYDドルフィン(中国仕様)

コーナリングが楽しいe-208のように、軽快で敏捷というわけではない。それでも回頭性は滑らかで、挙動は予想しやすく、不安感はない。

ステアリングホイールのレスポンスをクイックにし、小回りが利くようにすれば、より好ましいのではないだろうか。e-208のように、市街地での取り回しが強みになるはず。ブレーキペダルのフィーリングには、もう少しソリッド感が欲しい。

ドルフィンのインテリアは、アット3とは異なり、かなりコンベンショナル。適度な未来感はあるものの、雰囲気は欧州車のそれにも近い。

内装の高級感でいえばe-208の方が高いものの、ドルフィンも充分スマートに見える。全体の製造品質は低くない。パワーウインドウ・スイッチの光沢感のあるプラスティックなど、一部を除いて。

ドライビングポジションは良好。パワーシートが標準装備で、調整域も広い。

訴求力ある価格設定が堅調な販売の鍵

ダッシュボードの中央には、12.6インチのタッチモニターが据えられる。ナビやメディアの再生など、利用目的に応じて任意に回転でき、縦方向でも横方向でも使える。

タッチモニターの下には、スマートフォンを置くのに丁度いい小物トレイが突き出ている。ワイヤレス充電機能は、センターコンソールの小物入れに備わる。

BYDドルフィン(中国仕様)
BYDドルフィン(中国仕様)

車内空間は広々としている。身長が185cmを超える大人でも、リアシートへ快適に座れる。この大きさのハッチバックとしては、例外的といっていい。フラットなフロアとタイヤが四隅に位置する、プラットフォームが効いている。

荷室容量は345Lでクラス相応。荷室の床面は高さを調整でき、便利だろう。

英国へ上陸を果たすドルフィンは、好調なスタートを切るだろうか。冷静に比較すれば、同クラスのライバルより標準装備に優れ、タッチモニターの使い勝手が勝り、車内空間はクラス上。アドバンテージは少なくない。

テストコースという条件ではあったが、走りも悪くない。際立つ部分はないが、不満も感じられなかった。今のところ納期は短く、注文から数週間以内に乗り出すことが可能だという。恐らく、心が揺れる読者もいらっしゃるはず。

とはいえ、英国人には馴染みの薄い自動車メーカーなだけに、踏み出す勇気が必要なことも事実。訴求力のある価格設定が、堅調な販売の鍵を握るだろう。

BYDドルフィン(中国仕様)のスペック

英国価格:3万3000ポンド(約531万円/予想)
全長:4290mm
全幅:1770mm
全高:1570mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:7.1秒
航続距離:426km
電費:7.0km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1658kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:60.0kWh(実容量)
急速充電能力:−kW
最高出力:203ps
最大トルク:29.5kg-m
ギアボックス:−

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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