英国一の大富豪 「好き」が高じて自動車会社設立 ジム・ラトクリフ独占インタビュー

公開 : 2023.04.29 18:25

無骨なSUV「グレナディア」はなぜ生まれた?

ジム・ラトクリフ氏は、なぜ自動車会社を設立したのか? きっかけは、とあるパブでのさりげない会話だったという。その道のりを辿っていきたい。

――パブでの有名な会話から今日に至るまでの道のりを教えてください。

「話はパブの前から始まっています。ランドローバーディフェンダーでサファリに行き、あちこちを飛び回っていました。英国への帰りの飛行機が遅れたので、よく知っているガイドとカレーを食べに行ったんです。彼らは600台のディフェンダー(先代)を運用しているのですが、もう作られないと聞いて『どうすりゃいいんだ』と嘆いていました。なぜランドクルーザーを買わないのかと尋ねると、『お客さんがあまりにも跳ね回るから』と言う。そのときひらめいたんです。あなたはこう尋ねるとでしょう。『今の状況を知って、2016年と同じ決断をするか?』と。答えはイエスです」

ラトクリフ氏はさまざまなことにチャレンジする冒険家でもあった。
ラトクリフ氏はさまざまなことにチャレンジする冒険家でもあった。

「その後、わたし達は何年にもわたってプロジェクトを評価し、継続するに足るかどうかを自問してきました。その答えは、いつも『イエス』でした。クルマはいいし、市場にはそれを売るための明確な穴がある」

「もちろん、世界情勢は決して楽観視できるものではなく、予想以上に時間がかかりました。パンデミック、ウクライナ、中国のロックダウンなどは、あらゆる意味でコストがかかります。財務的には、10億ユーロ(約1480億円)の費用がかかると考えていましたが、15億ユーロ(約2220億円)もかかりました」

――イネオスがブランドなのでしょうか、それともグレナディア?

「当初は、自動車会社をグレナディアと呼ぼうと思っていました。しかし、イネオスは今や世界中のあらゆるスポーツ活動で知られているので、ブランドをイネオス、クルマをグレナディアと呼ぶことにしたのです。クルマを買うということは大きな決断であり、そのクルマを作った人たちがきちんとした評価を受けていることを知っておかなければなりません」

「(クルマのネーミングは)数字ではなく、名前で締めくくることになると思います。好きなパブの名前にするか、軍隊の旅団にするか、それはわからない! でも、次のクルマにはとても気の利いた名前がつけられると思いますが、それはお伝えしません。わたし達が思いついたのはごく最近のことで、使えるかどうか確認する必要がありますが、誰かが提案したときには決定的な瞬間のように感じました」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジム・ホルダー

    Jim Holder

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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