英国一の大富豪 「好き」が高じて自動車会社設立 ジム・ラトクリフ独占インタビュー
公開 : 2023.04.29 18:25
メルセデス・ベンツやBMWとの関係性
――あなたはメルセデスAMG F1チームの共同所有者であり、メルセデス・ベンツから工場を購入したわけですが、なぜBMWのエンジンを使うことになったのでしょうか?
「BMWとは本当に良い関係で、BMWと競合するわけでもないので、自然に思えたんです。BMWモトラッドのR 1200 GSは、オンロードでもオフロードでも素晴らしい走りを見せてくれるし、問題なくぶっ飛ばすことができる。わたし達がやろうとしていることと見事な対称性があるんです」
「小さなエンジンは嫌だ、というのが一番の動機でした。2.0Lではパワーが足りません。そこで、6気筒エンジンを持つ多くのメーカーに声をかけ、BMW、メルセデス、トヨタと話をしました。どれも素晴らしいエンジンであることは間違いないのですが、話をするうちにBMWとの関係が深まりました」
「その関係が決め手となったのでしょう。注文数や需要については具体的ではなかったので、プロジェクトに対するサポートが重要でした。もちろん、メルセデスも、ハンバッハの工場を購入するという契約で、大きな貢献をしてくれました」
――英国で作るつもりだったんですよね。ハンバッハ(フランス)の契約は、断るには惜しいものだったのでしょうか?
「基本的には、そうです。詳細は明かせませんが、オラ(メルセデス会長のケレニウス氏)とは友人であり、F1チームの共同経営者でもあります。よく話をする仲で、彼がアイデアを出してくれたんです。需要は縮小傾向にあり、(ハンバッハで生産していた)スマートは新たな方向性を打ち出していた。そして、最先端の工場と十分な訓練を受けた従業員を、お互いにメリットのある価格で提供してもらったんです」
世界の変化に乗り遅れるわけにはいかない
――メルセデスは、あなたの自動車業界への参入をどのように見ていますか?
「まず、メルセデスはGクラスの注文に事欠きません。作ったものはすべて売り、その多くは20万ユーロ(約3000万円)で販売されています。わたしも何台か持っていて、気に入っていますが、グレナディアとは違います。グレナディアは、まったく異なるスペースを占めているのです。事実、ルイス(・ハミルトン)とジョージ(・ラッセル)がグレナディアを運転することを許可されたことは、わたし達の間で競争するとは全く考えていない証拠です」
――それならば、ガソリンやディーゼルにこだわってもいいのでは?
「世界は変化しており、レイトアダプターになるわけにはいきません。技術はまだ発展途上で、それはリスクでもあるのですが、完全に成熟するまで待って市場に参入することはできません。それでは遅すぎるのです。わたし達は、2026年に何にでも勝るクルマを発売し、そこから市場の最先端で開発を続けられると信じています。航続距離400kmでロンドンからマンチェスターまで行ける。2026年には、そんな距離を走れるクルマができるはずです」
――なぜ、オーストリアのシェークル山を登れることが、グレナディアの特徴になったのでしょうか?
「正直なところ、すべてを制覇したと思っても、最後にシェークルがある。メルセデスがGクラスをシェークルに持っていくのはそのためです」