獲物を追うヒョウのような走り アウディeトロンGT 長期テスト(1) 電動グランドツアラーの実力は?
公開 : 2023.05.06 09:45 更新 : 2023.08.03 15:57
獲物を追うヒョウのように鋭く走る
少なくとも、筆者はこのeトロンGTへ強い関心を抱いている。時間に追われるAUTOCARでの業務を、BEVで無事にこなせるかという不安もあるが。
既に、真っ赤なアウディは良い相棒になってくれそうだ、と感じている。獲物を追うヒョウのように、鋭く現実世界を走ってくれる。静かで滑らかで、たくましい。65.1kg-mの最大トルクが即座に生み出され、ゾクゾクするような加速も披露する。
インテリアやボディのデザイン的な美しさも、現在の多くのアウディより訴求力があると思う。RS7ほどのアグレッシブさは感じられない。鮮やかなタンゴ・レッドでも、親しみやすさがある。
筆者なら、アスカリ・ブルーやフローレット・シルバー、ケルモラ・グレーといったカラーを指定するだろう。その方がエレガントに映ると思う。しかし、流麗なシルエットのおかげで、レッドでもまったく違和感がない。
前置きが長くなったが、ここで長期テスト車の内容をご紹介しよう。eトロンGTは最高速度244km/hが主張される4ドア・ファストバックで、グレードはフォアシュプルング・クワトロが選ばれている。エアサスペンションが標準装備となる。
駆動用モーターは前後に1基づつ搭載され、リア側には2速オートマティックが組み合わされる。駆動用バッテリーの容量は93.4kWhで、車重は2347kgもある。かなりの重さだが、シャシーはしっかり受け止めているようだ。
5気筒ターボエンジンならもっと好きになれた?
長期テスト車の英国価格は、いくつかのオプションを加えて11万6315ポンド(約1872万円)。かなりの金額だ。
もっとも、今の英国ではBMW M3 コンペティションが約8万5000ポンド(約1368万円)で、ポルシェ911 カレラSは約11万ポンド(約1771万円)もする。オプションは抜きで。
フォアシュプルング・クワトロには、バング&オルフセンのオーディオにヘッドアップ・ディスプレイ、後輪操舵、マトリックスLEDヘッドライト、プロ・スポーツシート、遮音ガラスなどが装備されている。内容を考えれば、納得できる金額といえるだろう。
ちなみに、ベースグレードのeトロンGTは約8万5000ポンド(約1368万円)から。巧妙な価格設定だが、コストパフォーマンスとしては悪くない。
eトロンGTの第一印象はかなりいい。450馬力の直列5気筒ターボエンジンをボンネットに積んでいたら、もっと好きになれただろう、と心が訴えるとしても。
ボディが重く、充電に時間がかかっても、アウディのスポーツモデルとして本物ではないとはいえない。走りも容姿も、後輪駆動のR8 RWD以来となるエキサイティングなモデルなように思える。
1つ、気になる部分を発見した。パーキングセンサーは少し過敏過ぎるかもしれない。
これからしばらく、アウディの電動スーパーサルーンと一緒に暮らすことになる。その能力を確かめる過程で、いくつかの課題も見えてくるはずだ。