競争力はライバルと同等以上 アルファ・ロメオ・トナーレ PHEVへ試乗 足を引っ張る車重

公開 : 2023.05.07 08:25

高品質で広々とした車内空間

パワートレインも、車重には少し手を焼いている。ダイナミック・モードを選んでも、最高出力が280psもあることを感じにくい。駆動用モーターが中間加速をアシストしていることは間違いないのだが、積極的というわけではない。

右足を深く倒してやっと、ソフトウエアが指示を出しているような印象だった。意欲的に運転したいという気持ちを、抑えるかのように。

アルファ・ロメオ・トナー・プラグイン・ハイブリッド Q4ヴェローチェ(英国仕様)
アルファ・ロメオ・トナー・プラグイン・ハイブリッド Q4ヴェローチェ(英国仕様)

ブレーキペダルの反応は、やや敏感かもしれない。日常的な速度域では問題ないのだが、少し強めに踏むと、緊急ブレーキをかけたようにハザードランプが点灯する事があった。

車線維持支援システムは、介入が少し過剰気味。ステアリングホイールへ制御が細かく入るものの、それが正しい方向ではないことも。改善の余地があるだろう。

トナーレの車内空間は広々としている。ダッシュボードの操作系は整然とレイアウトされ、把握しやすく操作性も良い。インフォテインメント・システムのソフトウエアは完成度が高く、扱いやすい。タッチモニターの表示もクリアだ。

アルファ・ロメオは、製造品質の向上に努めている。内装パネルなどはソリッドで、ラインがきれいに揃いフィット感は高い。

ただし、素材にはばらつきがある。オプションだというソフトなレザーは上質で、シフトパドルのタッチも好印象。しかし、安っぽいプラスティックやゴム引き仕上げの部品も混在している。

主要ライバルと同等以上の競争力

トナーレ PHEVは興味深いアルファ・ロメオだ。ブランドらしいパッションが滲んでいて、動的能力も低くはない。そして何より、現在の市場における主力モデルとしての訴求力がある。

20インチ・ホイールを履いたトナーレなら、駆動用バッテリーだけで走れる距離は69km。CO2の排出量は29-33g/kmで、会社からの貸与車両とした場合、税率は多くのライバルが12%なのに対し8%へ抑えられる。

アルファ・ロメオ・トナー・プラグイン・ハイブリッド Q4ヴェローチェ(英国仕様)
アルファ・ロメオ・トナー・プラグイン・ハイブリッド Q4ヴェローチェ(英国仕様)

実際に試乗した結果でも、氷点下の気温で48kmには届いていた。春の穏やかな天気なら、50km台中盤には届くだろう。このクラスのSUVとしては、優秀な数字といえる。

トナーレ PHEVの英国価格は、Tiグレードで4万5995ポンド(約740万円)から。装備内容などを比べると、ライバルのBMW X1ボルボXC40と同等以上の競争力を持つと考えられる。

新時代のアルファ・ロメオとして、合理的な内容に仕上がっているトナーレ。一方で、古くからのブランドファンの気持ちを掴むとはいえないだろう。この両者のバランスを叶えることができれば、ブランドの勢いは一層増すはずだ。

アルファ・ロメオ・トナー・プラグイン・ハイブリッド Q4ヴェローチェ(英国仕様)のスペック

英国価格:4万8495ポンド(約780万円/試乗車)
全長:4530mm
全幅:1840mm
全高:1600mm
最高速度:206km/h
0-100km/h加速:6.2秒
燃費:66.7-76.9km/L
CO2排出量:29-33g/km
車両重量:1835kg
パワートレイン:直列4気筒1332ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:12.0kWh(実容量)
最高出力:280ps(システム総合)
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:6速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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